柔道ニュース 『平成27年度  全日本学生柔道優勝大会』

みなさん、こんにちは。

 

とてもご無沙汰してしまいました。申し訳ございません。

記録的な猛暑もここ数日はだいぶ涼しく感じます。7月後半から金鷲旗、小学生錬成大会、中学生関東大会、インターハイ、全中、世界選手権、全小など、柔道ファンには堪らないシーズン真っ盛りです。是非、日頃の成果を遺憾無く発揮され、悔いの無い試合をして頂きたいと思います。

 

さて、今日のテーマは『全日本学生柔道優勝大会』です。

大分前の話で恐縮ですが、6月27日(土)・28日(日)の両日、日本武道館にて開催されました。この大会は、大学生の団体日本一を決める大会で、男子は体重無差別の7人戦、女子は5人戦と3人戦があり、5人戦は先鋒次鋒が57㌔以下、中堅副将が70㌔以下、大将が体重無差別。3人戦は体重無差別となっており、いずれも地区予選を勝ち抜いたチームによるトーナメント戦となっています。

私は日曜日の男子の試合を3回戦以降観戦しました。

この大会は春の高校選手権とともに毎年日本武道館で開催されるので良く観戦に来ている大会です。団体戦では、夏の中高生は毎年会場が変わりますし(今年は中学は北海道、高校は奈良県)、大学の体重別団体は毎年同じ会場ですが兵庫県という事で、なかなか行けません。

いつも言っている事ですが、団体戦は個人戦とはまた違ったおもしろさがあり、特にこの大会は男子と女子の3人戦は体重無差別で毎試合選手配列が自由であるため、オーダーの当たり外れなどもあって興味深いところです。

今年は、上位数校が実力伯仲、稀に見る大混戦が予想されましたので、そのあたりから触れてみたいと思います(以下、敬称略)。

まず、7連覇中の東海大ですが、昨年の決勝メンバーから王子谷・渡邉・松雪が卒業、倉橋(4年・東海大相模)・影浦(2年・新田)・香川(1年・崇徳)が加わりました。

全日本覇者の王子谷という大黒柱は抜けたものの、やはり層の厚いチームです。

3年連続2位の日本大も、原沢・黒木・大内が卒業、本間(4年・羽黒)・尾崎(3年・作陽)・向(2年・高岡第一)が加わりました。こちらも、今年の全日本覇者の原沢という大黒柱が抜けましたが、優勝を狙える戦力です。

一方、昨年の高校柔道のスター選手が多く入学して、非常に戦力アップしたのが明治大です。小川(1年・修徳)・田中(1年・高川学園)・川田(1年・大成)の3人で、1年生ながら、既に上田と共にチームの主力選手という活躍ぶりでした。

そして、昨年のメンバーがごっそり残り優勝候補となったのが筑波大です。筑波大は、昔は他校と比べ小柄な選手が多いイメージが強いチームでしたが、昨年と今年は大型選手も多く(120㌔を超える選手が4人)、中量級も永瀬(4年・今年の世界選手権81㌔級代表、全日本3位)・長倉(4年・インターハイ優勝)・小林(4年・全日本ジュニア優勝、ベルギー国際優勝)とメンバーが揃いました。

この4チームは実力が拮抗しており、もし複数回試合したら、都度結果が変わってもおかしくない状況でした。

結果は、まず日本大と明治大が準々決勝で対戦、②対2の内容差で日本大が勝ち、続く準決勝では日本大と筑波大が対戦、筑波大が大将戦で逆転して①対1の内容差で勝ちました。もう一方の準決勝は東海大と国士舘大の対戦となり、東海大が5対0で勝ちました。今年の国士舘は大型選手が少なく、高校時代に活躍していた遠藤・小川・砂田・江畑・田崎といった選手達もやや元気が無かった印象でした。是非来年以降に期待したいと思います。

 

いよいよ決勝ですが、オーダーは以下の通りでした。

【東海大(オーダー順)】

阪本(4年・100㌔・大成・インターハイ3位)

香川(1年・130㌔・崇徳・インターハイ優勝)

倉橋(4年・135㌔・東海大相模・インターハイベスト8)

ウルフ(2年・100㌔・東海大浦安・インターハイ優勝)

長澤(4年・90㌔・作陽・インターハイ予選は勝ち上がっていたが当日欠場)

ベイカー(3年・90㌔・東海大浦安・インターハイ優勝・今年の世界選手権代表)

影浦(2年・120㌔・新田・インターハイ3位)

 

【筑波大(オーダー順)】

永瀬(4年・81㌔・長崎日大・インターハイ優勝・今年の世界選手権代表)

橋高(4年・127㌔・鶴来・インターハイベスト8)

尾原(3年・123㌔・科学技術・インターハイ出場)

黒岩(4年・135㌔・福大大濠・インターハイ出場)

長倉(4年・90㌔・修徳・インターハイ優勝)

小林(4年・90㌔・埼玉栄・インターハイ3位)

神谷(3年・120㌔・沖縄尚学・インターハイ2位)

 

ご覧の通り、体格も高校時代の実績も大差なく、どちらかというと筑波大が前半勝負で東海大は後半勝負といったところでしょうか。

先鋒戦は、ポイントを取りたい筑波大と取られたくない、もし取られても最小限に止めたい東海大。結果は永瀬の技有優勢勝ち。

次鋒戦は1年生とは言え大物ルーキーで、あわよくば1点期待したい東海大とやりたくない筑波大。結果は内股を見事に透かして橋高の一本勝ち。

これで、俄然筑波大が有利かと思いました。

次は倉橋と尾原共に大型選手でしたが、倉橋が、技有優勢勝ち。2対1で筑波大リードですが東海大もこの1点で流れを変えたいところ。

続く中堅は、ウルフと黒岩。東海大としては後を考えると1点欲しいところではなかったかと思いましたが、引き分け。

この時点で、やはり流れは筑波大と思いました。でも上水監督からウルフには代表戦の準備指示が出たように見えました。

残り3人となり、長澤と長倉の対戦。接戦で優劣がつくのは難しいかと思われましたが、キャプテンの意地か長澤が見事に横四方固一本勝ち。これで全くのイーブンに戻りました。

残り2人ですが、世界選手権代表のベイカーが残っている分、逆にやや東海大有利かと思いました。しかし、筑波大も小林が意地を見せ引き分け。

大将戦も引き分けで代表戦となり、東海大はやはりウルフで、筑波大は永瀬が出てきました。

ウルフと永瀬。階級は2つ違いますが、永瀬は全日本3位の実績がある通り、大きい選手を苦にしないし、組み手が旨く試合運びも上手です。一方のウルフも高校時代から、個人戦もさることながら、団体戦でも数々の勝負処を制してチームを優勝に導いてきた勝負強さを持つ選手です。手に汗握る熱戦でしたが、組み手や試合運びの旨さ、そして、今年に懸ける筑波大キャプテンの意地も加わり、筑波大の悲願の初優勝となりました。

筑波大のみなさん、優勝おめでとうございます。

筑波大の前身は東京教育大で、更に遡ると東京高等師範学校となります。この東京高等師範学校に校長として赴任されたのが嘉納師範で、着任後1894年に柔道部を創部されました。ですから120年を超える伝統校であり、東京五輪金メダルの猪熊氏、ソルトレイクやローザンヌの世界チャンピオン佐藤氏など、幾多の名選手も輩出しています。

 

筑波は国立大ですが、体育系の学部があり、少ないながらも柔道選手のセレクション枠もあるように聞いています。しかしながら、私立の有名大と比べれば限られた環境の中での優勝はすばらしい事と思います。来年は主力選手がごっそり卒業となってしまいますが、また強力チームを作って優勝争いを期待したいです。

惜しくも決勝で敗れた東海大は、8連覇の夢が途絶えた事にはなりますが、2-0から代表戦まで至った、執念を感じる試合でした。この悔しさを噛み締めて来年以降も精進して欲しいと思います。

日本大、明治大、国士舘大も来年はあらためて頂点を目指して頑張って欲しいです。

今年も団体戦の奥深さを存分に味わえた名勝負の数々を見せて頂きました。

出場選手始め、大会関係者の方々に感謝したいと思います。

 

平成27年8月17日

【第148号】