柔道ニュース 『栄光の陰に柔道あり』

みなさん、こんにちは。
コロナ禍で、柔道界もとても大きな影響が長く続いております。
大会もほとんどが延期か無観客試合を余儀なくされており、本当に選手が可哀想でなりません。一日も早くコロナが落ち着いて、試合も全面復活となって欲しいと願うばかりです。

ここで嬉しいお知らせを一つご紹介します。山﨑道場の卒業生の宇井(柚)選手(佐賀商高1年)がインターハイの県予選を勝ち抜き、1年生ながら見事本戦出場を決めました(52kg級)。ちょうど1年前の第190号で練習再開の紹介をしたラントレでもすばらしい動きを見せており、中学の全国大会に期待していましたが、残念ながら中止となってしまいました。
佐賀商は、宇井選手が入学前の3月の全国高校選手権でも、全5階級のうち優勝1人、準優勝2人と3階級で決勝進出を果たす大活躍でした。
宇井選手も初めてのインターハイとなりますが、1試合1試合自分の柔道を心掛け日頃の成果を発揮してくれたらと思います。

さて、今回のテーマは『栄光の陰に柔道あり』としました。
今年のスポーツ界で大きな話題の選手2名、プロ野球阪神タイガースのゴールデン・ルーキー佐藤輝明選手と、ゴルフの全米女子オープンで見事優勝した笹生優花選手です。この2人の共通点が、お父様が柔道をやっていて、その影響を受けて育ったという点だと聞いたので、この場でご紹介しようと思いました。

まず、佐藤選手のお父様の博信氏ですが、日本体育大学で古賀稔彦氏と同期、86キロ級の選手として活躍、卒業後も大阪産業大学で教えながら現役を続け、講道館杯や正力杯、全日本学生、チェコ国際など数々の大会で優勝や上位入賞など、輝かしい成績を収めています。今は関西学院大学で体育・武道の先生をされており、身長も183センチと大きく、今も現役時代と変わらぬがっしりとした体格で、佐藤選手の体格はお父様譲りだと言われています。
佐藤選手は、子供の頃は食が細かったそうですが、「人に迷惑をかけない」「お腹いっぱい食べる」この2つをモットーとして育てられたそうで、現在の立派な体格(187センチ、94キロ)に至ったと思います。
お父様は、輝明選手の大学時代も、試合になるとビデオに録画してフォームの研究の手助けをしたり、自宅にバーベルや器具を置いて筋トレや肉体改造のアドバイスをされるなど、輝明選手の現在の活躍に寄与されてきました。
また、ドラフト指名後の会見でも輝明選手は「勝負事には相手がいる。相手の事はコントロール出来ない。だから、自分に出来る事に集中して一生懸命取り組むように」とお父様から教えられた事として紹介したり、「今まで支えてくれて、すごく感謝している」とコメントしています。柔道と野球、競技は違えども共通点はあり、ルーキーながら今期首位と好調タイガースを牽引する主軸打者に流れる柔道の血に、清々しさを覚えたものです。

次に、女子プロゴルファーの笹生優花選手です。
まだ記憶に新しい6月7日、若干19歳のプロ2年目の選手が、4大メジャー大会の全米女子オープンで勝つという大快挙を成し遂げました。
渋野選手の全英女子オープン優勝以降、今年の松山選手のマスターズ優勝と、ゴルフ界で快挙が続いています。
話を笹生選手に戻します。
笹生選手は8歳でゴルフを始めたそうですが、早くから宮里藍さんのようなプロになりたいとの希望があったそうで、お父様の正和氏は「そうなるためには物凄い努力が必要だぞ」と言ったものの、「やる!」と返答、以後お父様との二人三脚で練習の日々を送ったそうです。お父様の指導は、大きく2つ。「下半身強化」と「柔軟性」でした。
足首に錘(アンクルウェイト)を付けて、お父様が考案した練習メニュー、子供の頃から毎朝5時から様々なトレーニングの日々を送ったそうです。笹生選手といえば、何と言っても並外れた飛距離が魅力ですが、こうした長年の努力の賜物なのですね。ちなみに、このアンクルウェイトはお父様が柔道のトレーニングに使っていた鉄ゲタがヒントになっているそうです。また、足腰とフットワーク、手首の強化にボクシングのサンドバッグ打ちも取り入れていますが、これもかなり本格的なパンチで、野球のマスコットバットでの左右の素振りや、アンクルウェイトを付けたままでのノックなど、どのトレーニングも動画を見ると本気で取り組んでいるのがわかります。
笹生選手は、尾崎将司氏に師事していますが、初めて尾崎氏の門を叩いた際に、その下半身の強さに尾崎氏が驚き、どんな練習をしたらこんな下半身が出来上がるのかと舌を巻いたそうです。
もちろん、今の笹生選手があるのは、よりゴルフの練習環境に恵まれているフィリピン(お母様の故郷)に移住して練習したり、プロについて個人レッスンを受けたり、将来アメリカツアーで活躍したいと、幼少期から英語も毎日勉強したりもしていた、日々の努力の賜物だと思います。現在笹生選手は、日本語、英語、タガログ語、韓国語、タイ語と5ヵ国語を話すマルチリンガルだそうで、このことだけでも凄いと感じます。
既に国内でも優勝を重ねており、果たしてこれからどこまで強くなるのか期待が高まりますが、引き続き努力を怠らず、益々活躍して欲しいと思います。

佐藤選手と笹生選手の話をご紹介しました。
アスリートには、その競技に必要な技術は勿論必要ですが、基礎体力や体幹の強さといった土台がしっかりしていて成り立つものであり、柔道で培った体験が、柔道以外の道に進んだお子さんへの指導に活用された好例だと感じました。
両選手の今後の活躍にも注目したいと思います。

令和3年6月26日
【第195号】

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