みなさん、こんにちは。
3月になり、寒い日もありますが徐々に暖かさを感じるようになりました。これからは一雨毎に春が近づいてきます。
柔道界でも春の試合シーズン到来です。
全日本選手権の地区予選が終わり、出場選手が出揃いました。高校生の選手権も間近です。
山﨑道場の子供たちも、県選手権や全国大会の予選など大事な試合が続きます。是非日頃の成果が出せるよう頑張ってください。
さて、今回のテーマは『基礎体力をつけよう』としました。
大相撲では、現在モンゴル出身者が上位を占め、長らく日本人が優勝からも遠ざかっているのが実状です。そして、幕下上位や十両でこれはと思う有望力士は大抵モンゴル出身者で、この傾向は当分続くと予想出来ます。
では、何故モンゴル出身の力士は強いのか調べてみると、相撲だけでなく柔道でもあてはまる事が多いなと感じたので書いてみます。
現在、大関や横綱候補として有力視されている逸ノ城関を例にみてみましょう。
彼は遊牧民として生まれ育ちました。幼少から裸馬に乗り、舗装もされていない大草原を何キロも先まで毎日水汲みに行く事で、自然と体力 ・体幹・バランスが養われたと言われています。また、幼少期からモンゴル相撲もやっていました。彼の太ももの太さ、特にハムストリングの発達は目を見張るものがあります。
更に、来日前には柔道も習い、同じ道場に現在の照の富士関もいて、2人一緒に相撲の名門・鳥取城北高校にスカウトされました。
190センチ190キロを超える体も勿論凄いのですが、ただ大きいだけでなく動ける巨漢です。照の富士関共々スケールの大きさを感じざるを得ません。他にもハングリー精神など精神面も大きな素養かと思いますが、幼少期からの育った環境による、基礎体力の違いが避けて通れない話ではないかと思います。
日本柔道界でも、かつて『木村の前に木村無く、木村の後に木村無し』と言われた木村政彦氏は、少年期に川で砂利を取る仕事を手伝い足腰が鍛えられたそうです。種目は違いますが、『神様・仏様・稲尾様』のプロ野球の鉄腕稲尾和久氏も、子供の頃から舟の艪を漕いで足腰とバランスが自然と鍛えられたと聞いています。しかしながら私達の頃から既にそうでしたが、日本では日常生活の中で自然と屈強な体が鍛えられる環境では無いのが実状です。
柔道がこれだけ世界中に普及した現在、子供の頃から柔道に取り組んだり、各国伝統の格闘技経験者が柔道に転身したりで、日本だけが突出したキャリアという訳では無くなっています。基礎体力があってキャリアもある外国選手に勝っていくのは容易な事ではありません。このような状況下、日本が世界の頂点にどうしたら立てるのでしょうか。
私は、子供の頃から柔道の基礎を学ぶと共に、基礎体力を作っていく事ではないかと思います。
昨年シニアでも大活躍して大きな話題となった阿部選手は、小学校3年の時、あるきっかけから基礎体力作りに励み、努力を続けた事で現在の活躍があります。阿部選手の柔道は、技術も勿論ですが基礎体力が無いと出来ないと思います。逆に言えば、日本人でも基礎体力を付けていけば、色々な柔道が出来ます。
阿部選手の活躍を見て、古賀稔彦氏が高校生の頃を思い出しました。71キロ級でしたが、当時の世界チャンピオンクラスの選手に勝ったり、団体戦でも大型選手を相手に全国優勝の立役者となりました。その試合ぶりは、今でも鮮明に記憶に残っていますし、その後の活躍は皆さんご存知の通りです。特に平成2年の全日本選手権では、日本武道館一杯の観客が訪れ、特に子供たちの姿が目立ったように記憶します。
古賀選手も子供の頃から柔道に励むと共に、石段の昇り降り等の基礎体力作りもやっており、中学からは講道学舎で鍛えられました。
かつての古賀選手がそうだったように、阿部選手を見て柔道をやる子供が増えたり、既に柔道をやっている子供たちも、あんな技をかけてみたいと熱心に稽古に励みレベルアップする。その結果、日本柔道界の裾野が広がり頂点もより高くなる。そんな日を夢見ています。
平成27年3月15日
【第143号】