みなさん、こんにちは。
寒い日が続いています。風邪やインフルエンザも流行しているようです。気をつけてください。
去る1月20日、全日本柔道連盟の強化委員長である斎藤仁氏が御逝去されました。オリンピック2連覇、全日本選手権での激闘の数々など、記録にも記憶にも残る名選手でした。180センチ150キロの巨躯ながら、倒立歩行や前宙も出来る高い運動能力に柔軟性も合わせ持ち、技も多彩で寝技も強くバランスの良さや器用さも兼ね備えたすばらしい重量級選手でした。指導者としても、鈴木桂治氏や石井慧氏など金メダリストを育成、特に鈴木氏を連日夜中まで鍛えたエピソードは印象深いです。3学年違いますが、ほぼ同世代の方の早すぎる御逝去に、大きな大きな衝撃を受けました。在りし日のお姿を偲びつつ、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
さて、今回のテーマは、『少年柔道雑感』としました。2月7日(土)に絆サロンという会合で『柔道を本来の位置に戻そう』というパネルディスカッションを伺う機会がありました。
あらためて少年柔道について考えるキーワードがあったと感じたので、取り上げてみたいと思います。
まず、この会を主催され、ディスカッションのコーディネーターをされたのは小川郷太郎先生でした。小川先生は外交官を長年なさっていた方で、東大時代は柔道部に所属され、現在も全柔連国際委員や柔道教育ソリダリディの理事等に従事しています。
パネラーは三浦照幸先生、山口香先生、ピエール・フラマン先生の3名。
三浦先生は立教高校や講道館で長年指導した経験、特に決して強豪校とは言えない学校での指導経験についてのお話が中心でした。
山口先生は日本女子柔道で初めての世界選手権金メダリストであり、筑波大准教授、全柔連監事、オピニオン・リーダーとしても著名。日本柔道の今後のあり方についてのお話が中心でした。
フラマン先生は、現役時代フランスのナショナルチームで活躍、現在は慶應義塾大学柔道部コーチもされています。日本柔道と比較対象となるフランス柔道事情についてのお話が中心でした。
皆さん柔道に対し熱い思いを語られました。順不同ですがご紹介します。
【フランス関連】
・フランスの柔道登録人口は60万人、そのうち4才から8才が80%、サッカー、テニスに続く人気スポーツ、5240もの柔道クラブ(道場)がある
・本家日本では、柔道はキツイ、危険というイメージが強く、近年高校や大学で柔道部員が集まらなくて困っているのに対し、フランスでは多くの青少年がこぞって道場に通い、親達がそれを応援している
・柔道は危険ではなく身を護るもの。身体を鍛え・規律・礼節や忍耐力を養うものと考えている
・子供の試合は全く無い訳ではないが、小規模な大会が少しあるのみで全国大会などは無い
・柔道指導者育成システムが確立している。指導者は1955年から法律で定められた国家資格が必要。資格を取るには約1年、およそ200時間の講習受講も必要。講習には骨格や筋肉の勉強等も含まれる
・指導者は柔道指導のみで生活が出来る。他の仕事をしていない先生は多い。生徒が100人いれば特に贅沢しなければ食うに困らない
【三浦先生】
・柔道を好きにさせる
・勝つ事より続ける事を重視
・柔道部員には規則正しい生活を指導し、通学時間を学習時間にあてることで成績を確保。結果、柔道部員は、立教大学へ進学出来ることをアピールして部員を募集し、大所帯となる。40年間の指導で7回埼玉県大会を勝ち抜いて関東大会に出場
・ハワイ遠征等も実行、『柔道部はハワイに行ける』などの工夫もした
・三浦先生は1940年生まれ。何年経っても退職しても教え子を思う気持ちは当時と変わらない
【山口先生】
・嘉納師範が柔道を創って100年を超えた。次の100年、何を教育し、どう生かしていくか
・嘉納師範が柔術から柔道を立ち上げた頃、きっと反対勢力も多かったと思う。そうした課題を解決し、現在約200の国と地域に広まるに至った
・嘉納師範は先見の明があったと思うし、プロモーションにも長け、時代に合った物を作り出して行かれたと思う
・これからの時代、グローバル社会で生きていくために何が必要か
・正しく競い合う事。競い合うなかで、進歩も生まれる
・負けも受け入れ、勝って奢らず
・仲間を作る
・柔道精神をもって事に当たれる人材を育成する
・技を作る、技を練る時間は必要。試合も必要だが、あまり多すぎるのは子供もナショナルチームも良くない
・(特に少年柔道は)勝つための柔道ではなく、正しく組んで正しく技をかけて結果勝つ事が肝要
・柔道を通して世の中の仕組み、日本人としての美徳、ルールなどを学び、応用力を身に付ける、それらを覚えていく課程が大事
この他にも色々な話がありました。私がメモを取り間違えたり、解釈を間違っている箇所もあるかもしれません。また、前後の話が無いと発言の本意が正確に伝わらないかもしれませんが、ご容赦願います。
平成27年2月10日
【第142号】