柔道ニュース 『平成25年講道館杯』

みなさん、こんにちは。

 

11月も下旬となり、街中でも紅葉がきれいな季節となりました。

大相撲も納めの九州場所が後半戦を迎え、久しぶりに横綱同士が好調で優勝を競っています。

また、白鵬関が年間80勝を達成しました。これで3度目、新記録更新です。

一口に年間80勝と言っても、平均13勝2敗でも78勝ですから、それ以上の成績をあげなければならない訳で、いかに凄い数字かおわかり頂けるかと思います。

相撲は短時間で勝負がつきます。足が滑っても、勇み足でも負けですから、柔道よりも格下の相手に負ける確率の高い競技です。体調不良やケガ、精神的に万全でない日もあるでしょう。それらを含めての成績ですから、あらためて凄さがわかりますね。

 

さて、今日のテーマは『平成25年講道館杯』です。

11月9日(土)・10日(日)の両日、千葉市の千葉ポートアリーナにて開催されました。私は2日目に会場で観戦しました。

当日の試合は男子3階級(90㌔級、100㌔級、100㌔超級)、女子4階級(48㌔級、52㌔級、57㌔級、63㌔級)の計7階級です。

 

この大会は来年の世界選手権の第一次選考を兼ねています。今年の世界選手権出場選手は免除されますが、高校・大学・警察・実業団から選抜された選手が出場しますので、活きの良い若手がベテランにどこまで通用するかなど新旧対決も見所の一つです。

試合場は階級別に7試合場に別れ、場内には大きなモニターが設置、各試合場での進行状況が一目で把握できます。

試合場も注目選手も多い今回のような大会では、チェックしていた対戦を見逃してしまう事もあるため、このような観客を意識した計らいは大変有り難いですね。

 

では、試合結果と私感を記載します。

上から順に優勝・2位・3位・3位、敬称は略させて頂きます。

 

【女子】

 

 

■48㌔級

森崎(鹿屋体育大柔友会/22才)

遠藤(筑波大3年/20才)

近藤(大成高3年/18才)

山岸(三井住友海上/27才)

 

福見選手が引退し、世界選手権代表の浅見選手は出場免除。そんな状況下で誰が優勝するか注目された階級です。

優勝した森崎選手の決勝の相手は、第1シードの遠藤選手。遠藤選手が前半有効を先取し展開も優勢に進めていましたが、終盤に腕を痛めたようです。森崎選手が背後について倒してからの絞め技で一本勝ちでした。森崎選手は卒業後も大学に残っているそうで、その頑張りが実を結んだと言えると思います。

 

 

■52㌔級

中村(三井住友海上/24才)

志々目(帝京大2年/19才)

垣田(兵庫県警/27才)

五味(JR東日本/23才)

 

中村選手にとってロンドン五輪以来、1年3ヶ月ぶりの復帰第1戦です。自身の状態はもちろん、他の選手がどこまで距離を縮めているかに注目しました。

見事復帰戦を飾りはしましたが、以前の好調時からすると隔たりがある印象を受けました。それでもしっかり結果を残すところは、さすが第一人者ですね。

 

 

■57㌔級

松本(フォーリーフジャパン/26才)

宇高(コマツ/28才)

出口(松商学園高3年/18才)

石川(コマツ/24才)

 

こちらも第一人者の松本選手に注目です。復帰第1戦の全日本実業団では3位どまり、『もうチャンピオンじゃなくて楽になった』とコメントする中での試合に注目しました。

結果は松本選手が危なげ無く優勝。まだ他の選手とは地力の差があるように感じました。また、宇高選手が準決勝で出口選手を投げた大外刈りは見事でした。また、今回は出場免除でしたが、山本杏選手も含めた試合を是非見たかったですね。

 

 

■63㌔級

 

片桐(コマツ/25才)

嶺井(桐蔭学園高1年/16才)

田代(コマツ/19才)

大住(JR東日本/24才)

 

この階級は、新旧入り交じり注目選手がたくさんいました。

田代選手…かつて金鷲旗等で大活躍、ケガから復帰した第1シード

津金選手…昨年のグランドスラム東京優勝、今年のインターハイチャンピオン

佐野選手…一昨年の全日本ジュニアチャンピオン

嶺井選手…1年生ながらインターハイ2位

鍋倉選手…昨年全中優勝

片桐選手…昨年本大会2位

大住選手…今年の実業団チャンピオン

 

結果は昨年2位の片桐選手が優勝しました。山形中央高時代も環太平洋大時代も中央の大きなタイトルは無く、社会人(コマツ)になってから成績を出してきた苦労人の選手です(シニアの全国大会初優勝)。

また、惜しくも2位となった嶺井選手については後述します。

 

 

【男子】

 

■90㌔級

 

加藤(千葉県警/28才)

ベイカー(東海大1年/19才)

西山(新日鐵住金/22才)

菅原(パーク24/23才)

 

注目選手は昨年の全日本チャンピオン・加藤選手、昨年度高校柔道界の第1人者、大学でも1年目から大活躍・ベイカー選手、実力者・西山(大)選手、昨年2位で長身の下和田選手などです。

また、東海大⇒旭化成の吉田優也選手が肘の負傷で欠場となり残念でした。

結果は加藤選手が安定した強さを発揮してオール一本勝ちで優勝。他をよせつけない、さすがと思わせる試合内容だったように思います。

また、ベイカー選手も着実に力をつけていると感じました。力の強い外国人との対戦・グランドスラム東京を注目したいと思います。

 

 

■100㌔級

 

増渕(旭化成/31才)

高橋(明治大4年/22才)

齋藤(新日鐵住金/28才)

乙津(東芝プラントシステム/23才)

 

この階級は穴井選手が引退、世界との距離が広がる状況にあり、早急な強化が必要と言われています。今回は、元々『ポスト穴井』の一番手と言われていた高木(海帆)選手(元世界選手権代表)や羽賀選手(平成22年・23年にこの大会連覇)、第1シードで昨年優勝の熊代選手、平成21年に優勝、外国人にも強い小林大輔選手、今年のインターハイ優勝のウルフ選手、ベテランながら全日本選手権などでも活躍の増渕選手や齋藤選手を注目しました。

結果は増渕選手が見事な試合ぶりで優勝。高校時代から知ってはいましたが、31才となった今、以前にも増して強くなっているように思いました。

内容的にもしっかり組んで投げるキレ味鋭い内股が印象的で、かつての名選手達を彷彿とさせる美技でした。一方で他の有力選手は、まだ本調子ではない感じで元気が無かったように思いました。

 

 

■100㌔超級

 

上川(京葉ガス/24才)

百瀬(旭化成/24才)

岩尾(京葉ガス/23才)

原沢(日本大3年/21才)

 

100㌔級同様に最近の大きな国際大会では厳しい結果が多い階級です。それだけにかつての山下/齋藤/正木/小川/篠原選手のような出現を日本中の柔道ファンが待ち焦がれています。

結果的には上川/百瀬/原沢選手など期待の選手が上位に進出してはきましたが、内容は寂しいものを感じました。

おそらく観戦していた誰もが、このままでは当分国際大会は厳しいと感じたのではないでしょうか。

 

 

■若手の台頭

すべての階級で期待したいですが、63㌔級で惜しくも2位となった嶺井選手の成長には、驚きました。近隣道場出身ということもあり、小学生時代から注目していましたが、正直ここまでの活躍は予測していませんでした。まだ田代選手にどこまで食い下がれるか、そんな感じで見ていました。次に対戦したらどちらが勝つかわからないとは思いましたが、それでも正々堂々渡り合って結果を残し、実業団チャンピオンの大住選手にも一本勝ちして決勝進出、決勝でも先に有効を2つ取って、体よく逃げていたら勝てたかもしれないと思います。

しかし、そんな姿勢は微塵も見せず、積極的に攻めて一本を取りに行きました。最後は体が密着した状態からうまく連続攻撃を仕掛けられ小内刈り一本で敗れはしましたが、大変立派な試合だったと思います。

いわゆる体幹が強い感じで、普通なら持って行かれるかと思われる状況から残してしまうし、全体のバランスも良く敢闘精神も素晴らしいと思います。また、敗れた後の礼法もきちんとしていて、好感を持ちました。このような選手は伸びると思うし、伸びて欲しいと思います。これからもケガに注意し、慢心することなく努力を続けて欲しいものです。

 

他にも男子では60㌔級2位の大島選手、73㌔級優勝の丸山選手、女子では超級で優勝した朝比奈選手や78㌔級で2位となった浜選手など、若手の台頭もありました。

これからもベテランから若手の選手まで互いに切磋琢磨し、日本全体のレベルアップが図れると共に、柔道への関心が高まり柔道をやってみたいと思う子供達や若者が増えてくれることを願っています。

 

平成25年11月22日

【第126号】