柔道ニュース 『平成26年 全日本柔道選手権大会』

みなさん、こんにちは。

たいへんご無沙汰してしまいました。申し訳ございません。

今日でゴールデンウィークも終わりですね。皆さんはどんなお休みを過ごしましたか。気候も良く新緑もきれいなこの時期は行楽も良いですが、毎年多くの少年柔道選手達にとっては格好の試合や合同練習の時期となっており、休みどころかいつもより長時間柔道三昧の生活となります。選手達はもちろん、ご家族もたいへんではありますが、集中して鍛えたり試合経験を積める貴重な機会です。

時間が経過してしまいましたが、テレビでグランドスラム・パリの試合を放送していました。まず目についたのが館内を埋め尽くした観客の多さでした。1万人とのことですが日本で開催される主要大会や国際大会でも、あれだけ会場が一杯になる事は残念ながらまず無いのが現実で、あらためてフランスの柔道人気を実感しました。

 

さて、今回のテーマは『平成26年 全日本柔道選手権大会』です。

今年も4月29日(祝)に日本武道館で開催され、父や弟、甥と共に会場に足を運びました。

 

◆今年の見所

注目すべき点は多々ありますが、何といっても最大の見所は、混戦が予想される中での優勝争いです。

その他いくつか記載します。

 

・体重無差別の戦い

中量級の世界選手権代表である81㌔級永瀬選手(筑波大)や73㌔級の大野選手(天理大⇒旭化成)が重量級相手にどんな試合運びをするか。

 

・若手の台頭

今回たくさん出場した高校生&予選通過時は高校生だった大学1年生が、若手らしい活きの良い試合でベテラン勢にどこまで通用するかに注目です。

 

・全日本に相応しい試合

日本の最高峰の大会に相応しい、すばらしい技・内容のある試合が展開されることを期待しました。

 

◆地区予選

・上川選手

私は東京予選を観戦しましたが、上川選手(京葉ガス)が危なげ無く優勝、その後福岡の全日本体重別も優勝し、海外遠征含め今年は久しぶりに好調と感じました。

 

・羽賀選手

東海大を卒業し社会人(旭化成)となりました。ケガから復帰し、昨年の講道館杯時よりだいぶ調子が戻ったように感じました。100キロ級は、世界選手権代表が今大会終了後に決まります。内容次第では、空席もあり得るという報道もなされ厳しい状況のなかで上位進出なるか。

 

・高校生の活躍

関東地区でウルフ選手(東海大浦安高校⇒東海大1年)が優勝。関東地区は、神奈川県警や千葉県警、了徳寺学園職員、筑波大学や山梨学院大学等、強豪が揃う激戦区です。この地区予選で高校生(予選時)が優勝することは、井上康生選手以来の記録だそうです。他にも、東海地区では佐藤選手(静岡学園高校⇒日大1年)が優勝、中国地区では崇徳高校の香川選手と高川学園高校の田中選手がワンツーフィニッシュで代表を独占、四国地区でも影浦選手(新田高校⇒東海大1年)が優勝。全部で10ある地区予選で4地区も高校生が優勝するのは過去に例が無く、若手の台頭は喜ばしい反面、社会人や大学生の奮起にも今後期待したいです。

 

◆本選

・1回戦

1回戦から好カードが多く、注目した対戦は次の通りです。

羽賀選手VS佐藤選手、高橋選手(新日鉄住金、平成22年大会優勝)VSウルフ選手、増渕選手(旭化成)VS増田選手(新日鉄住金)など。

 

・2回戦

影浦選手VS齋藤選手(新日鉄住金)七戸選手VS羽賀選手、永瀬選手VS熊代選手(ALSOK、今年の全日本体重別100㌔級優勝)、吉田選手(旭化成、今年の全日本体重別90㌔級優勝)VS青山選手(福岡県警、165㌔)、大野選手VS穴井選手(了徳寺学園職員)等です。特に、全日本体重別の階級の違うチャンピオン同士の試合が見られるのもこの大会ならではです。

実際に増渕選手の見事な払腰、永瀬選手の一瞬の小外刈、吉田選手の体格差を物ともしない体落など柔道の醍醐味を感じさせてくれるキレのある技もありました。また、影浦選手の逆転の小外刈(技有)、羽賀選手の再三の内股を凌いだ佐藤選手のバランスの良さも印象に残りました。

 

・3回戦

吉永選手(新日鉄住金)が50㌔以上重い鈴木選手(山梨学院大)を袖釣込腰⇒上四方固で一本勝ちした試合は見応えがありました。

 

・準々決勝

上川選手が吉永選手(新日鉄住金)を指導4勝ち。西潟選手が七戸選手を袈裟固一本、永瀬選手が高橋選手に競り勝ち、永年のライバル王子谷選手(東海大)と原沢選手の同期生対決では、王子谷選手が技有り先取後、気合いの大外刈一本で、それぞれベスト4進出を決めました。

 

準決勝や決勝の内容はテレビや新聞等でご覧になっていると思いますので割愛させて頂きます。

 

◆結果

・上川選手

優勝を意識し慎重になりすぎたのか、なかなか技が出ませんでした。西潟選手との準決勝でも、残り9秒に一本勝ちしましたが、あのまま判定になっていたらどうなったか。しかし、本調子の姿ではなくても決勝まで勝ち進む自力を期待し、世界選手権では本来の力を発揮する試合を見せて欲しいものです。

 

・七戸選手(九州電力)

体つきも一回り大きくなった感じでしたが、優勝候補として固くなってしまったのでしょうか。羽賀選手との試合でも後半追い込まれていた感じでした。上川選手同様に世界選手権での活躍を期待します。

 

・原沢選手

ケガから復帰後の調整不足のためでしょうか、残念ながらこの1年の伸び率が感じられませんでした。

 

・王子谷選手

気合いと作戦が上手く絡み合った印象を受けました。

原沢選手との試合では闘志溢れる顔つき、永瀬選手との試合では、あの大きな体で背負い投げを繰り出し、そのまま寝技で短時間に勝負を決め、決勝に体力を温存できたのも大きかったと思います。決勝でも、これまでの経験を生かして前半凌いで後半勝負という作戦が見事に決まったと感じました。

意外でしたが、東海大学出身の全日本チャンピオンは、山下氏、井上氏以来の3人目だそうです。

 

◆総括

混戦との下馬評通り、やはり圧倒的な力量の違いや、どんな展開になっても勝つという安定感のある選手がいないのが現状ではないかと思います。実際、全日本の優勝者を見ると、連覇したのは2004・2005年の鈴木桂治氏以来ありません。全日本を連覇出来る選手でないと、世界の頂点は厳しいのかもしれません。この混戦から抜け出してくる安定感のある選手を期待したいと思います。

 

◆『指導者表彰』

全日本選手権の試合会場において『指導者表彰』が初めて執り行われました。これは、昨年の世界選手権のメダリストが最初に柔道を習った道場の先生を表彰するもので、素晴らしい企画です。役員席で一際大きな拍手をされていた山下泰裕氏の姿が印象的でした。これからも是非続けて欲しいと思います。

 

 

◆世界選手権に向けて

今大会を終えて出場選手が決定しました。100キロ級の代表が見送られるという史上初の何とも寂しい結論になりましたが、この苦渋の決断をした現実を真摯に受けとめ、強化に励み、いつの日かこの決断が正しかったとなるような日々を過ごして欲しいですね。また、W代表となった階級の二番手選手は、プレッシャーも大きいかもしれません。

代表選手の皆さんには、本来の力を発揮出来るようコンディションを整えて世界選手権に臨んで欲しいと思います。

 

平成26年5月6日

【第131号】