柔道ニュース 『桜門体育学会 平成28年度大会』

みなさん、こんにちは。

 

大相撲の元時天空の間垣親方がご逝去されました。柔道経験者で多彩な足技を得意にしていたし、柔道の全日本選手権会場で何度もお見かけするなど、柔道も引き続きお好きな様子でした。また、息子が幼稚園の頃に園に来訪され子供達との交流を図るなど多方面でご活躍されていました。病気が無ければ、まだ現役を続けておられたと思います。謹んでお悔やみ申し上げます。

 

さて、今回のテーマは『桜門体育学会 平成28年度大会』です。平成29年1月22日(日)、東京・桜上水の日本大学文理学部校舎にて開催されました。

私は、その中の『トークセッション』のみ聴講させていただきました。

今年のトークセッションは「Rio2016からTokyo2020に向けて ~アスリートとコーチの視点から~」と題して、4人のゲストスピーカーによって執り行われました(案内状記載順)。

 

原澤 久喜 氏(リオオリンピック柔道 100 kg超級銀メダリスト)

金野 潤 氏(日本大学文理学部体育学科准教授・日本柔道連盟強化委員長)

木村 敬一 氏(リオパラリンピック競泳 4 種目 銀・銅メダリスト)

野口 智博 氏(日本大学文理学部体育学科教授・ リオパラリンピック日本代表選手団競泳パーソナルコーチ)

もちろん私は柔道の話が聞きたくて行ったのですが、水泳の話も興味深く、あっと言う間の2時間でした。

今回は、以前当欄でもお世話になりました金野先生の講演をご紹介させて頂きたいと思います。大きく4つの内容でした。

 

1、日大柔道部出身のリオ五輪出場選手と東京五輪に向けて活躍が期待される現役学生の強化選手紹介

2、世界の柔道の状況

3、日大柔道部の選手育成方法の紹介

4、ロンドン以降リオまでの全柔連の改革

 

では、ご紹介していきます。

1、日大柔道部出身のリオ五輪出場選手と東京五輪に向けて活躍が期待される現役学生の強化選手紹介

①リオ五輪出場選手

・原沢選手(100㌔超級)

・バトトルガ テムーレン選手(100㌔超級、モンゴル代表)

・レイズ カヨル選手(100㌔級、カナダ代表)

3選手とも東京五輪も有力候補。

レイズ カヨル選手はリオでは肩を故障していたが、東京では金メダル候補となっても不思議でない力の持ち主。

②現役学生の強化選手

・佐藤選手(3年、100㌔超級)

・向選手(3年、90㌔級)

・ダニエル選手(2年、100㌔級、ブルガリア代表候補)

・福岡選手(2年、73㌔級)

 

2、世界の柔道の状況

リオ五輪で日本の柔道は男女14階級中12階級でメダル獲得。特に男子は全階級でメダル獲得。これは前回の東京五輪以来半世紀ぶりで快挙と言っても良い活躍と思う。しかし、ややもすると柔道はお家芸とか、楽勝ではとか、メダルは取れて当たり前のように思われているかもしれないが、現実は違う。

・現在世界柔道連盟に202ヶ国が登録

・柔道人口:ブラジル200万人、フランス56万人、ドイツ18万人、日本16万人

・世界は競技人口が年々増加しているが日本は減少している

・日本は15年前の2002年には20万人以上だったのが現在16万人

・特に日本では、小中学生の人口が大幅減少しており、いずれ代表世代となる人達の層が薄くなる事を示唆している

・課題は人数だけでは無い。今は様々な国で強化が進んでいる。金野先生が現役時代は、ソ連・フランス・ドイツ・韓国などが強かったが、マークすべき国はまだ少なかった。今は違う。一回戦から油断出来ない。例えばイスラエル。国として初めてメダルを取った競技が柔道で人気がある。特にサッソンという選手は今後原沢選手の有力なライバルとなると思われる。

ソ連は崩壊して様々な国に分かれ、キルギスタンやジョージアなど旧ソ連のそれぞれの国から1名ずつ代表選手が出てくるようになっている(実質的に強豪ライバル増)。

フランスは柔道が文化として確立されている国と感じる。グランドスラム・パリに行くと、観客は満員で、純粋に柔道が好きで観に来ているし柔道をとても良く知っているのが見て取れる。例えば日本選手がフランスの選手に勝っても、それがすばらしい技なら惜しみない拍手が送られるし、逆にフランス選手が逃げればブーイングが出る。選手としてとても気持ち良く試合をすることができる国で日本も見習うべきと感じる。日本はリオ五輪での活躍で子供の柔道人口が増えるかなとも期待したが、昨年12月の調査でも前年比7千人減少だった。これは少子化や競技の多様化、柔道界で起きた問題の影響など様々な要因があるが、フランスほど柔道が文化として確立していないことを表しているとも思う。

また、五輪に出場するには国際大会に出場し上位入賞してポイントを獲得することで、世界ランクの上位に入っていないといけない。男子22位以内、女子16位以内。ポイントは2年で消えるので国際大会に出続ける必要がある。各階級200人から400人がランキングされているから、上位にランクインするのも容易ではない。このように五輪で上位に入るのはもちろん、出場するだけでも大変である。東京五輪は開催地なので、日本は世界ランクに関係なく各階級1名ずつは出場枠が確保されている。しかしながら、世界ランク1位と2位は五輪の組合せで決勝で当たるようにシードされて組合せが組まれる。だから、例えばリネール選手がランク1位の場合、原沢選手はリネール選手と決勝で当たるようにするためには、2位を確保しておく必要がある。それゆえ、開催地だからといって、上位を狙うためには世界ランクを軽視して良い訳ではない。

こうした制度の下、戦っていく必要がある。

 

3、日大柔道部の選手育成方法の紹介

日大柔道部では、文理学部体育学科のバックアップのもと様々な面から選手育成を行なっている。それぞれの専門の先生について指導してもらい、強化を図っている。

①食事

栄養士の先生に診てもらっている。体重や筋力アップなど各々の課題に対する食事方法などを指導してもらっており、食事に対する意識が変わった。

②医療

専門の先生について日頃から血中乳酸値や体脂肪率などを図ったり、科学的に強化ポイントをレクチャーしてもらうなど強化している

③トレーニング指導

FMSという身体評価測定法を用いて個々人の体を分析し、強化すべきポイントをレクチャーしてもらいケガの少ない体作りなどを指導してもらっている。

④メンタル指導

モチベーション・アップのビデオを作成してもらい、試合前に見るなどメンタル面も強化している。

⑤ダンス

柔道は腕力だけが強くても脚力だけが強くてもダメ。体のつながり、連動感・バランスアップなどを目的に、専門の先生に指導してもらっている。

⑥様々な格闘技の研究

総合格闘技やレスリングなど、講師を招いて研究している。

 

4、全柔連の改革

①国内ランキングシステム導入

様々な角度からポイントを詳細に数値化、最終予選の結果だけでなく長い目で見て、誰が代表に相応しいかを評価するようにした

②選手選考を公開

選考をマスコミに公開。どういうふうに代表が決まるかを完全に公開した

③GOJIRA(映像・分析ソフト)導入

『Gold Judo Ippon Revolution Accordance(通称:GOJIRA)』   徹底的に試合を分析して相手を研究したり、審判の傾向なども分析。スペシャリストが詳細データ化して提供。

④女性コーチのバックアップ

女性コーチが働きやすい環境作り。出産や育児への支援など。

⑤研修会

柔道以外にも様々な研修も取り入れた。

・連盟の予算の研修

・マナー研修

・SNS講習

・トレーニング研修など

このように井上監督体制になってから、合宿の夜などは座学も取り入れるようになった

⑥他の格闘技研究

レスリングなど他の格闘技研究

⑦マルチサポート

JOCの支援、ナショナルトレーニングセンターなど

⑧井上監督による指導改革

井上監督は、「理」と「情」の両方を兼ね備えた稀有な指導者。井上監督になってから様々な改革が行われた。

強化に科学を積極的に取り入れた

選手1人1人に細やかな配慮

⇒五輪選考時も、選考に洩れた選手達に先ず声を掛けた監督

最後に、東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張っていくのでこれからも応援よろしくお願いします。

 

以上のような内容でした。金野先生の意図をどこまでお伝え出来たかはわかりませんが、貴重な話の数々でとても勉強になりました。

金野委員長、井上男子監督、増地女子監督。

すばらしい体制であり、今後とも応援していきたいですね。

 

日本大学体育学会の関係者の方々、金野先生はじめ登壇者の方々に感謝申し上げます。

 

平成29年2月4日

【第165号】