明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いします。
さて、今回の話題は『執念』とさせていただきました。
この『執念』という言葉ですが、辞書を引くと『ある一つのことを深く思いつめる心。執着してそこから動かない心。「執念をもってやり遂げる」「執念を燃やす」』とあります。『執念深い』などとニュアンスとしては良くないイメージで使われる事もありますが、ここでは『最後の最後まで諦めず、最大限の力を振り絞って立ち向かっていく姿勢』と解釈して話を進めます。
先のグランドスラム大阪で66キロ級の丸山選手が阿部選手に勝って優勝しました。
会場で観戦していましたが、丸山選手の『執念』を感じる好試合で、現地で生観戦だからこそ味わえる雰囲気も存分に楽しめ、今日は観に来て良かったと感じた試合でした。
日本でのグランドスラムは通常東京開催ですが、今回は会場の関係で大阪でした。
阿部選手はどこの会場でも人気がありますが、今回は地元の神戸に近いため阿部兄妹への応援は特に凄くて、丸山選手も天理大⇒ミキハウスと関西に縁があるとは言え完全にアウェー状態でした。
丸山選手自身「会場中が『阿部ワールド』みたいでした。去年(のグランドスラム東京)からそう感じていたので、見てろよと思っていました」と語っていたそうです。
阿部選手は2年連続世界チャンピオンで、この階級の一番手はもとより日本柔道選手団の顔と言っても過言でない存在であり、むしろライバル不在を危惧する声も出ていました。この大会で優勝すれば来年の世界選手権の代表も内定、更にこの階級で他の選手の追随を許さないレベルまで大きく引き離す所でした。
負傷していたという話もあり、万全な体調では無かったようですが、今回の負けは更に強くなるために非常に良い経験になったのではないかと思います。
阿部選手は大学3年で丸山選手もまだ24才。東京オリンピックまで互いに切磋琢磨して、オリンピックでは頂点に立って欲しいと思います。
もう一つ、柔道では無いですが『執念』を感じた試合がありました。それは年末に行われたレスリングの全日本選手権決勝で伊調選手が川井選手に勝った試合です。
伊調選手と言えば、オリンピック4連覇という大偉業を成し遂げ国民栄誉賞も受賞した選手です。その伊調選手が、東京オリンピックに向けて2年のブランクを経て復帰しました。年齢は34才で復帰間もないこともあって、さすがに全盛期の頃から見れば仕上り具合は途上に見えました。
一方の川井選手は63キロ級のリオのオリンピック金メダリストで、年齢は24才と絶頂期、リオ後も継続して活躍中で、現段階では川井選手優位との評価が多かったと思います。
その両者が予選リーグと決勝戦で2度対戦。予選リーグでは川井選手が2対1の僅差ながら勝ちました。その後両者共に勝ち上がり、決勝で再び対戦した訳ですが、決勝も川井選手1点リードで残り26秒、伊調選手としては絶対絶命のピンチでした。それでも最後の最後、残り10数秒で2点取っての逆転優勝です。
まるでマンガに出てくるような劇的勝利で、失礼ながら「さすが五輪4連覇は伊達じゃない」と思いました。
テクニックや勝負強さもあるのでしょうが、やはり『執念』を見た感じがしました。
当たり前ですが『執念』だけでは勝てません。ベースとなる力が備わっていてこその話ではありますが、追い込まれた状況で底力を発揮できる精神力、『最後の最後まで諦めず、最大限の力を振り絞って立ち向かっていく姿勢』というものは、見ている者に感動を与えてくれます。そして、その精神力を支えるのは、やはり日頃の取組み姿勢ではないでしょうか。
平成31年1月5日
【第180号】