みなさん、こんにちは。
早いもので、もう5月も半ばとなりました。
既に夏日を記録するなど最近気温が上昇していますが、まだ湿度が低く練習するには良い季節かと思います。
山﨑道場の子供たちもゴールデンウィークには錬成試合や合同稽古などで、いつも以上に稽古を積めたことと思います。
成果を試合で発揮出来るよう頑張ってください。
さて、今日のテーマは『平成27年 全日本柔道選手権大会』です。
今年も4月29日、日本武道館にて全国の地区予選を勝ち抜いた精鋭42人が出場して開催されました。ご存知のように、本大会は体重無差別で、その年の柔道日本一を争う大会です。試合時間は6分、3審制、延長(ゴールデンスコア)無しなど、独自のルールで開催されています。
過去の全日本柔道選手権大会(以下全日本と略します)につきましては、予選も含めて第16、23、28、73、117、131回にも書かせて頂いています。特に16回や23回は全日本に出場する事の困難さや、試合場が1つであるため、他の大会とは異なる独特の雰囲気の元で開催されること等も書いていますので、よろしかったらそちらもご覧ください。
今年の大会は、次の点に注目していました。
①優勝争い
今年も飛び抜けた選手はいなく、混戦が予想されました。優勝候補数名がどんな戦いをして、誰が優勝するのか。
②重量級の再建
重量級の再建は、全日本柔道連盟強化委員会の取り組んでいる大きなテーマです。結果以上に重量級選手の試合内容に注目していました。
③90㌔級以下の選手の活躍
体重無差別の試合の醍醐味である、体の小さい選手が大きい選手とどんな試合をするか。体格の違う相手と試合する際の組み手や試合の組み立て方などは、やはり興味深いです。
④試合内容
国内最高峰の大会に相応しい、正々堂々と勝負して、礼法や試合態度なども子供たちのお手本となるような試合を見たいと思いました。
まず、率直な感想として、今年は例年以上に盛り上がった良い大会だったと感じました。
一本で決まった試合も多かったと思いますし、ベテラン・若手・小柄な選手等もそれぞれ活躍が見られました。そして、最後は有力選手が期待通りに勝ち残り、有力選手同士のしのぎ合いが見られました。
ベテランとしては、小野選手(筑波大⇒了徳寺職、34才)が、同じ階級の社会人2年目の選手(23才)に得意技の内股で一本勝ち。次の試合は石井選手に僅差負けでしたが、年齢を感じさせない元気な姿を見せてくれました。
若手では、予選時は高校生だった香川選手(崇徳高⇒東海大)が、2度勝ってベスト16に残りました。試合っぷりも良く、これからが楽しみな選手だと思いました。ウルフ選手(東海大浦安⇒東海大)と田中選手(高川学園高⇒明治大)も大学2年生と1年生の対戦となりましたが、これからも対戦が楽しみです。
90㌔級以下の選手としては、海老選手(東海大⇒旭化成)、垣田選手(近畿大⇒旭化成)、岩田選手(天理大⇒兵庫県警)、山下選手(東洋大⇒静岡県警)などが、良い動きを見せてくれたのではないかと思いました。
特に海老選手は、激戦区の東京都予選で大きな選手達を相手に見事な試合っぷりで勝ち抜いていたので、特に注目していましたが期待通りの活躍だったと思います。
さて、ベスト8に勝ち残った選手をご紹介します。
◆高橋選手:30才、189cm123kg、大牟田高⇒国士舘大⇒新日鉄住金
◆原沢選手:22才、191cm122kg、早鞆高⇒日本大⇒日本中央競馬会
◆王子谷選手:22才、186cm140kg、東海大大相模高⇒東海大⇒旭化成
◆上田選手:21才、184cm130kg、大成高⇒明治大4年
◆西潟選手:27才、193cm130kg、桐蔭学園高⇒国士舘大⇒旭化成
◆石井選手:27才、193cm135kg、東海大浦安高⇒東海大⇒日本中央競馬会
◆上川選手:25才、185cm160kg、崇徳高⇒明治大⇒京葉ガス
◆七戸選手:26才、193cm121kg、那覇西高⇒福岡大⇒九州電力
優勝候補に挙げられた選手は皆勝ち残りました。ご覧のように全員大型選手ということは、重量級再建の成果が徐々に出てきているのではないかと思いました。
勿論、強化委員会の目指すところは世界で勝てる選手の育成にあるので、まだ道半ばかもしれません。
個々の試合については既に報道されていますので割愛しますが、準決勝の組合せは以下の通りです。
原沢選手 対 王子谷選手
西潟選手 対 七戸選手
この大会の3週間ほど前、福岡の選抜体重別では、以下の結果でした。
優勝:西潟選手
2位:王子谷選手
3位:七戸選手
3位:原沢選手
奇しくも準決勝の対戦相手は今回と同じ組合せでした。
王子谷選手 対 原沢選手
七戸選手 対 西潟選手
福岡では王子谷選手が優勢勝ち(支釣込足で有効)。もう一方の試合も西潟選手が優勢勝ち(指導3)しましたが、今回は逆に原沢選手と七戸選手が勝ちました。
上位4人の力が、これ程拮抗しているのは稀な事だと思います。
これからも切磋琢磨して、世界選手権や五輪に誰が出ても優勝が狙えるクラスになって欲しいと思います。
4選手について紹介します。
◆原沢選手
山口県出身、高校入学の頃は66㌔級の選手だったそうで、3年生のインターハイでは100㌔超級で3位となっていますが、それまでは全国的にはあまり知られていない選手だったと思います。日大入学後は中心選手として活躍、学生優勝大会で2年連続決勝進出した立役者でした。この全日本でも一昨年大学3年時に決勝まで進みました。大学時代もまだ体が成長していたためウェイトトレーニングを封印。目先の勝負以上に将来の大輪の花を目指す育成方針でした。
◆王子谷選手
大阪府出身、中学から親元を離れ東海大相模に進学、全中こそ3位でしたが、高校時代はインターハイ100㌔超級優勝、大学でも1年からレギュラーとして活躍、学生優勝大会での東海大7連覇(継続中)に2年上の高木選手や1年上の羽賀選手等と共に貢献しました。個人戦でも世界ジュニア優勝、大学在学中に全日本選手権優勝など、ジュニア時代からのエリート選手です。
◆西潟選手
新潟県出身、神奈川の桐蔭学園高から国士舘大。以前から長身でしたが100㌔級の選手で、超級になったのは社会人になってからです。国士舘のレギュラー選手でしたが、2年上に高橋(和彦)選手、1年上には石井(慧)選手がいて、当時は大黒柱という存在では無かったという印象です。全日本には社会人になってから、ほぼ毎年出場していますが、優勝も狙える上位選手と目されてきたのは昨年位からで、昨年の全日本選手権3位、今年の選抜体重別優勝など、最近になってトップクラスの実績を上げてきている選手です。
◆七戸選手
沖縄県出身、那覇西高⇒福岡大⇒九州電力と、大学以降も地方に在籍していました。最近、練習拠点を首都圏に変更、体も一回り大きくなって、昨年GDSパリ優勝や世界選手権ではリネール選手と好勝負(準優勝)するなど、活躍しています。
高校時代は100㌔級で、インターハイは2年連続3位。大学で超級に上げて4年で学生体重別で優勝しました。福岡大からの優勝者という事で話題になりました。お父さんは空手家で、弟の虎選手も九州電力の柔道選手です。
王子谷選手を除く3選手は、元々超級の選手ではなく、実績も中学時代は全中への出場経験も無い選手です。子供の頃特別な存在では無くても、『継続すること』や『努力すること』の大切さをここでも教えてくれたように思います。
原沢選手が見事に初優勝したわけですが、浮かれた様子も無く、インタビューの受け答えも実に素晴らしかったですね。今春から社会人となったばかりですから、日大の金野監督の指導の賜物ではないかと感じました。日大からは、金野監督以来3人目の全日本チャンピオン、金野監督が目を潤ませて喜びを語っていたとのテレビのリポートに、感じ入るものがありました。
まだ22才。まだまだ強くなる『伸びしろ』は十分あると思います。今年優勝出来なかったライバル選手と共に、日本柔道重量級を盛り上げて欲しいと思います。是非来年も素晴らしい全日本を見たいですね。
平成27年5月17日
【第145号】