柔道ニュース 『精神力』

みなさん、こんにちは。
いよいよ3月になりました。日にもよりますが、春めいてきましたね。
この時期は三寒四温の言葉通り、暖かい日と寒い日が短周期で繰り返しながら、徐々に春が訪れます。寒暖差がありますので、体調管理に気をつけましょう。

さて、今回のテーマは『精神力』です。
バンクーバーでのオリンピック、特にフィギュア・スケートは、日本での注目度が高かったと思います。
ここでは、女子に限定、中でも前半のショートプログラム~後半に向かう時点での様子を取り上げてみたいと思います。

まず、銅メダルのカナダ・ロシェット選手。応援のためにやってきたお母さんが急死。普通なら、出場さえ危ぶまれるところを鬼気迫る演技でショート・プログラム自己最高点!凄い精神力だと思いました。
また、フリーまで気持ちを切らす事なく銀に肉薄する銅メダル獲得。
小生には相応しい言葉は見つかりませんが、心から拍手を贈りたい気持ちです。

次に銀メダルの浅田真央選手。優勝候補として国民の期待を一身に背負い、多大なプレッシャーの中で、ノーミス&シーズンベスト。これも『凄い!』の一語ですね。試合後のコメントが物語っています。『久しぶりにすごく晴れやかな気持ち。金メダルは欲しい。でもいつも通り、パーフェクトに滑ることだけ考えたい。練習はたくさんしてきたから』。やはり、本番の気持ちを支えるのは練習で培った自信なのでしょうね。
フリーでも、難度の高いトリプルアクセルを2度共成功、後半は一部ミスもありましたが、見ていた日本人の誰もが、メダルの色以上にその頑張りを讃えたのではないでしょうか。
また、銀メダルにもかかわらず流した悔し涙。
きっとこれからのスケートに、そして人生に生きて来ると思います。

そして、金メダルのキム・ヨナ選手。優勝候補のプレッシャーももちろんですが、ショート・プログラムでは、浅田選手が非常に素晴らしい演技をした直後で、プレッシャーに拍車がかかると思われた中、歴代最高点。試合後のコメントにも感じる物がありました。
『(浅田選手の)スコアも観客の反応も見えたけれど、私には経験がある。真央の演技が私に影響するとは思わなかった』。
『プレッシャーはそんなに感じていない。なぜだかわからないけど、オリンピックに来た気がしない。何だかいつもの試合と同じ感じで、練習でしてきたことを見せられて良かった』。
『(金メダルは)選手なら誰でも欲しい。テレビで何度も見たけれど、オリンピックって予期せぬ結果が起こる。技術だけでなく運も必要。たとえ金メダルでなくても、ベストの演技ができればいい』。
変に肩肘を張る事なく、非常に素直に心情を語っているなあと感じました。そして、これは付け入る隙が無いかなという気持ちがよぎりました。
結果、フリーでも最高得点、合計で2位に20点以上の大差を付けての金メダル獲得。4年に1度のオリンピックに、ここまでピタリと照準を合わせ、ピークに持って行く事は、どんな競技であれ神業だと思います。素晴らしいと思いました。

柔道にも強い精神力を物語る話は多々あります。例えば、プレッシャーという観点でいえば、ソウル五輪の斎藤選手、日本柔道最後の砦として最終日に登場。それまで金メダル候補が次々敗れ、一つも金メダルを獲得していない絶体絶命という状況下、見事に日本柔道を救った金メダルでした。表彰式で目をつぶり、口びるを噛み締めた表情は忘れられません。その後のコメントは、プレッシャーがいかに大きかったかを物語っていると思います。『これで日本に帰れます』。優勝が決まった瞬間、日本のコーチ陣、吉村氏・藤猪氏は男泣きしていました。また、上村監督が歯を食いしばって堪えていた姿も目に焼き付いています。

また、観点は違いますが、ロサンゼルス五輪の山下選手。二回戦で突然の右足ふくらはぎ肉離れというアクシデントに見舞われました。恩師・佐藤コーチは、痛めた足が軸足という理由から、アウトかなと思ったそうです。当時の山下選手と言えば、上村コーチ曰く『畳の目にでも躓かない限り山下が負ける事はない』と断言していた程です。本人も最初で最後と決めていたオリンピックという夢の大舞台でした(モスクワ五輪は代表になりながら日本が不参加)。しかし、やはり【世界のヤマシタ】です。国民に涙と感動を与えた金メダルでした。類似ケースとしては、バルセロナ五輪の古賀選手。吉田選手との練習中に左膝じん帯損傷の大怪我、痛み止めの注射を打ちながら、見事に逆境を撥ね飛ばし金メダル獲得。他にもたくさんありますが、共通して言える事は、小生のような素人には想像もつかない、とてつもなく強靭な『精神力』あってこその結果だと思います。そして、その源は、それこそ地獄のような厳しい稽古であり、経験した人だけが行き着く境地なのではないでしょうか。

スケートと柔道、競技は全く違いますが、自己の力を大舞台で遺憾なく発揮できる『精神力』の重要性を、今回のスケートを見て改めて感じました。
『精神力』については、この柔道ニュースで最近題材にした『練習は試合のように、試合は練習のように』や、『良きライバルを持とう』にも相通じる物があると思います。

子供達の場合、難しい事かもしれませんが、ふだんの練習でどれだけ自分を追い込めるか、そしてその積み重ねだと思います。そのためには、意識を高く持って臨む事に尽きるように思います。一歩一歩頑張って行きましょう。

平成22年3月3日
【第22号】