柔道ニュース 『平成23年全日本選手権』

みなさん、こんにちは。

 

今日のテーマは全日本選手権です。

今年も昭和の日に、日本武道館で開催、最後まで白熱した優勝争いが展開され、興味深く観戦しました。

 

結果は既にご存知かと思いますので、私なりの視点で感じた事を書いてみたいと思います。

 

①頑張れ重量級!

ベスト8に残った選手の階級別人数は、次の通りです。

100㌔超級  4人

100㌔級    3人

90㌔級      1人

 

100㌔超級は、18人の選手がエントリーし、これは全体の45%です。比率からみれば妥当という見方もあるかもしれませんが、『18人のうち4人しか残れなかった』という厳しい評価もあるかと思います。

 

②出身校別出場者数

 

【大学】

東海大    9人

国士舘大  8人

天理大    4人

明治大    4人

筑波大    4人

日本大    2人

福岡大    2人

中央大    1人

日体大    1人

同志社大  1人

岡山商大  1人

早稲田大  1人

龍谷大    1人

山梨学院大1人

 

国士舘大が6年連続して首位でしたが、東海大が7年振りに首位に帰り咲きました。

 

【高校】

東京・国士舘    5人

神奈川・東海大相模 4人

東京・世田谷学園   3人

神奈川・桐蔭学園   3人

奈良・天理         3人

北海道・東海大四   2人

栃木・白鴎大足利   2人

埼玉・埼玉栄    2人

福岡・大牟田       2人

青森・青森北       1人

茨城・土浦日大     1人

新潟・東京学館新潟 1人

新潟・長岡高専     1人

石川・鶴来         1人

石川・津幡         1人

富山・富山第一     1人

愛知・大成         1人

大阪・東海大仰星   1人

兵庫・育英         1人

広島・崇徳         1人

山口・早鞆         1人

宮崎・宮崎工       1人

沖縄・那覇西       1人

こちらもご参考まで。

 

③国際ルール

今年から国際ルールが適用され、畳も緑と黄色に様変わりしました。

とは言え、ゴールデンスコアは適用されず、試合も6分でしたので、昨年までに近いルールでした。

ローカル・ルールの是非は、ここでは割愛させて頂きます。

 

④本郷選手

今回すばらしい活躍を見せた選手として、2名上げます。

1人は、本郷選手です。

土浦日大高⇒中大⇒セコム⇒平成管財⇒フォーリーフジャパン。現在は名将・津沢監督(元中大監督)率いるフォーリーフジャパンに所属。兄弟とも強く、世田谷学園⇒帝京大⇒セコムでインターハイ優勝の至道氏、土浦日大⇒帝京大⇒JRAの匡道氏はお兄さん。

本郷選手は、現在近畿予選3連覇している実力者ですし、先日の福岡の選抜体重別でも、高木選手や羽賀選手に勝つ等、実績もありますが、今回は高橋選手や西山選手を破り、しかも非常に内容のある試合をしていました。本郷選手の活躍で、大会自体が非常に締まり、今大会をたいへん盛り上げた功労者だと思います。

 

⑤七戸選手

昨年の学生チャンピオン(九州の大学では15年ぶり)ですが、全日本の強化選手でも無いし、全日本選手権は初出場で、名前を知らなかった人も多かったのではないかと思います。

沖縄出身、那覇西高⇒福岡大、今年九州電力に入社した社会人1年生です。極真空手全日本優勝経験のあるお父さんとベルギー人のお母さん、弟の虎選手も福岡大柔道部で活躍中、妹は重量上げ高校選手権優勝というアスリート一家。193㌢107㌔の均整の取れた体、長い脚、中量級クラスのスピード。鈴木選手との試合でも、前半は優勢でした。ただ、後半バテてしまい逆転負けしました。まだ徹底的に鍛え抜かれた完成された選手という印象ではなく、それゆえに今後の伸び次第では、近い将来全日本も取れるかもしれない逸材ではないかと思いました。

 

⑥高橋選手・立山選手・上川選手

昨年の決勝を争ったり、世界選手権や今年の選抜体重別の覇者ですが、今回は良い所なく姿を消しました。ケガ等、原因はあろうかと思います。しかしながら、歴代の名選手は、悪い時は悪いなりの柔道をして結果を残してきた、という厳しい評価もあると思います。

 

⑦棟田選手

1度でも出たら一流選手と言われる本大会に13年連続出場、2位×3回、3位×3回という輝かしい成績を残している選手ですが、今年は元気なく緒戦で敗退しました。

鈴木選手と同級生で中学時代からの好敵手。ここ3年間で3位・2位・3位だけに、残念でした。

 

⑧穴井選手

スピードと技のキレはすばらしいし組み手もうまいと思いますが、受けの脆さも見えた試合でした。

しかし、100㌔級ながら優勝候補と言われ、マークされながらも決勝まで進んで来たことはすばらしく、実力がある事の証明だと思います。

 

⑨鈴木選手

6月で31才という年齢、既に今大会3回優勝、3冠も達成しており、これ以上モチベーションを上げるのは困難かと思いました。

しかし、勝ちたいという気持ち、もう一度頂点に立ちたいという執念は、誰よりも高かったのではないかと感じました。

柔道自体は全盛期の面影を無くしていますが、あの頃の柔道を追い求めていたら、きっと途中で姿を消していたと思います。現状に合わせてスタイルを変え、柔軟に対応出来た故の勝利だったのではないでしょうか。また、勝ち方は色々ある事を教えて貰った気がします。

 

⑩最後に

柔道が好きだから、日本人に頑張って貰い、柔道が柔道らしさを失わないで欲しいから敢えて書きます。

 

私が記憶しているトップ選手を上げます(順不同/敬称略)

 

山下・遠藤・松井

山下・松井・斎藤・正木

斎藤・正木

小川・金野

篠原・井上・鈴木

 

かつては、このように複数人のトップ選手が凌ぎを削っていました。

松井氏は山下氏の9連覇の陰に隠れて1度も優勝していませんし、遠藤氏や斎藤氏も優勝は1度だけです。もし今の時代、現役ならばと考えてしまいます。鈴木選手の優勝は、前文記載の通り、最大級の賛辞に該当するものと思います。しかし、若い選手にもっと頑張って貰い、柔道界全体を盛り上げて欲しいと感じます。それだけの人材はいると思います。

 

 

平成23年5月7日

【第73号】