みなさん、こんにちは。
長年に亘り日本柔道界で重責を担われ、また、山﨑道場にとりましても良き理解者であられた君塚善之先生が11月9日ご逝去されました。
訃報を伺った時、突然のことで頭が真っ白になり言葉も出ませんでした。本当に残念でなりません。
大先生(山﨑道場内での呼び方)のほんの一旦しか存じ上げない者ですが、一言想い出を綴らせて頂きます。
大先生は全日本実業柔道連盟 副会長をはじめ、数多くの要職に就かれご尽力されてきました。
全日本選手権を筆頭に日本を代表する大会においては、常に大先生の御名前が役員欄に掲載されていました。
それほどの御方にもかかわらず、偉ぶる所は微塵もなく常に気さくで優しく接して頂きました。
ロータリー倶楽部の会長など地元の発展にも大きく貢献され、柔道界だけでなく実業家としても多大な実績を残された方です。
高い見識と経験に裏打ちされたお話は非常に深いもので、常に勉強させて頂きました。
大先生との想い出はたくさんありますが、その一端をご紹介させて頂きます。
大先生は高名な方でしたので、凄い人脈をお持ちでした。大会会場では有名な先生方が挨拶にいらしたり、親しそうに会話をされていました。
講道館の大道場でお孫さんの夏期講習に付き添われた際、観覧席の大先生を発見された松下先生が『お昼を一緒に』とお誘いしていました。
しばらくしてから
『上村さんも一緒に鰻を食べてきたよ。ついでに、明日から一緒に柔道衣を着ましょうと言われちゃったよ。』
と笑顔でお話されていたのが昨日のようです。
翌日から真夏の講道館大道場で上村先生・松下先生と一緒に柔道衣姿で子ども達を指導されている大先生のお姿を拝見し改めてその偉大さを実感しました。
また、全日本選手権の会場で私の勤め先の元役員と偶然出くわした事がありました。
知り合いの人から誘われて来たとの事でしたが、後日聞いてみるとその知り合いは大先生でした。
柔道の専門誌『近代柔道』に大先生の特集記事が掲載された事もありました。
実業家としての一面をはじめその人となりについて大変興味深く拝読させていただきました。
大先生は趣味も玄人はだしでした。
以前、大先生の行きつけのお店でご一緒させて頂いたことがありました。
最後に出てきた美味しい蕎麦は、何と大先生ご自身が作って持ち込まれたものでした。
大変美味しい割烹料理店でしたが、心のこもった大先生の蕎麦が一番美味しく有難かったですね。
こんなエピソードも伺ったことがあります。
かつて全日本選手権に出場するために上京された石川(裕章)先生と、腕相撲をして勝ったそうです。
当時の石川先生は95㌔級の現役バリバリの選手です。更には年齢差も随分あるのですから、凄い腕っぷしの強さですね。
最後に、この『柔道ニュース』についての想い出と御礼を述べさせて頂きます。
創刊号を掲載した翌日、大先生からメールを頂きました。
『柔道ニュース素晴らしかったです。次はまだでしょうか? 楽しみにしております』
聞けば、キータッチには慣れていないそうで、時間がかかるんだと仰っていました。
そんな状況ですらその後も毎回のようにメールでご丁寧な感想を送信いただきました。
自筆の手紙を頂戴した事もありました。その一つ一つに柔道に対する深い愛情と大先生の優しいお人柄が感じられ、大きな励みになりました。
こうして現在に至るまで継続して来られたのも大先生の大きな存在があったからこそと言っても過言ではありません。
本当に有り難かったです。
私は、ほんの数年、ほんの一旦しか存じ上げないのですが、それでも大きな影響を受けました。
ご紹介できない話も含め、どれも深く感銘し、そして心に残るものでした。柔道界で最も尊敬している方でしたし、お慕いもしていました。
柔道をこよなく愛した大先生。
太い声
がっしりした体
眼鏡の奥の優しい眼差し
笑った時の表情…
また、大先生と柔道話を肴に、菊姫で一杯やりたかったです。
大先生、本当にありがとうございました。
平成27年12月5日
【第152号】