みなさん、こんにちは。
ロンドン・オリンピックが終了しました。メダリストによる銀座パレード、すごい人でしたね。
終わってみれば、日本のメダル数は過去最高の38個、うち金メダルは7個という結果でした。
特に、女子レスリングの吉田・伊調両選手はオリンピック3連覇という、アジア人では柔道の野村選手しか成し得ていない快挙を達成、試合内容も素晴らしかったですね。
当欄でも以前ご紹介した伊調選手は、ロンドン入りしてからケガをして、足の靭帯を半分切っていたそうですが、そんな事を全く感じさせない危なげない試合ぶりでした。素人目に見ても、隙のない完成度の高さが感じ取れ、『こういう試合をしていれば絶対に勝てる』という試合ぶりだったと思います。
一方の吉田選手は直近まで調子が上がらず、大変だったそうですが、ベテランらしくそつが無い試合運びで、たった2分間という限られた時間内の数少ないチャンスを確実にモノにしていたと思います。かつて柔道の谷選手が2度目の金メダルを取った時と同じで、ピークの力は無くとも、現時点のコンディションなりに戦える術を持っていると感じました。両選手の恩師である栄監督が、吉田選手が優勝した時には顔をくしゃくしゃにしていたのも、それだけ吉田選手の仕上がり状態に不安があったからだと思います。
一方男子も、体操で内村選手が28年ぶりの個人総合金メダル(前回はロス五輪の具志堅選手)。ボクシングは村田選手が48年ぶりの金メダル(前回は東京五輪の桜井選手)で、しかもミドル級という重いクラスで達成したというのも日本ボクシング史に燦然と輝く凄い記録になると思います。更に、レスリングでは、米満選手が24年ぶりの金メダル(前回はソウル五輪の佐藤選手他)でした。ちなみに米満選手は柔道出身です。中学時代には柔道の県大会で優勝し、全中の個人戦に出場経験があります。出身の山梨県に柔道の強い高校が無かったということで、レスリングの強い高校に進学し、以来レスリング一本、今回に至っています。ちなみに同じレスリングのグレコ96㌔級に出場した斎川選手も小学校時代は柔道をしていて、私の出身道場に通っていたそうです。中学は(柔道部が無くて)陸上部に所属、高校からレスリングを始めました。普段は186㌢103㌔、穴井選手とほぼ同じ体格ですね。2人とも、柔道の環境が良ければ、柔道を続けていたかもしれません。
話を元に戻します。男子は上記いずれも、ずっと以前は『日本のお家芸』といった種目で、古豪復活を思わせる金メダル獲得でした。関係者の方々の気持ちは察するに余りあり、心から拍手を送りたいと思います。
さて、本題の柔道ですが、男子は金ゼロ、銀2、銅2と合計4つ。女子は金1、銀1、銅1と合計3つでした。
マスコミは、男子の金ゼロをことのほか強調して『大惨敗』と謳っています。確かに柔道は金以外は『負けた』と言われてしまう辛さはありますが、私の個人的な感想は、選手は頑張っていたと思います。
もちろん、諸々の条件が噛み合えば金メダルの可能性はあったと思いますが、逆にメダル数がもっと少ない可能性もあったと思います。残念ながら、このあたりが、今の男子の実状ではないかと思います。女子はもう少し行けたかなと思いましたが、想定の範囲のうち、悪い方にぶれてしまいました。
個々のクラスの感想も書いたのですが、既に色々な所で書かれているし、長文になってしまったので、ここでは割愛させて頂きます。
ただ、このままでは『昔はお家芸だった競技』の仲間入りをし兼ねない危機感を感じました。
柔道愛好者の一人として、柔道にはそうなって欲しくないので、勝手な私見ですが申し述べさせて頂きます。
【短期的視点】
オリンピックの金メダルが究極の目的とは思いませんが、やる以上は勝つという主旨から、感じている事を書いてみます。ご愛読頂いている方々には繰り返しになってしまい申し訳ありません。
①選手の試合数を減らす
ランキング制はあっても、試合数は必要最低限に抑える。
②ペース配分
①とも近いのですが、ベテランはベテランのペースで調整させる
③代表決定は早く
レスリングは昨年末に決まった選手もいました。今回5月となったのは、相応の理由があるのでしょうが、五輪本番で好成績を上げるには、もっと早く決めて、調整期間をゆったり取ることが必要ではないでしょうか。
④指導者の連携
難しい問題かもしれませんが、ナショナルチームの指導者と所属先の指導者の連携強化に工夫の余地は無いかも、一考すべき課題だと思います。
【中長期的視点】
やはり、本質は強い選手を育成していく事に尽きると思います。
素質もあり、やる気もある選手を中学生くらいから集めて、目先の勝ち負けではなく将来大きく花開くような徹底強化育成を、心技体全ての面からやる必要があるのではないでしょうか。
一つの学校や私塾でやるのは限界があるので、全国レベルでそういうプロジェクトを作り、指導者も生活の心配なく指導に専念できる環境・体制が欲しいと思います。
今ならまだそれが出来る指導者もいますが、技術伝承は一度途絶えてしまうと戻れなくなってしまいます。
平成24年8月27日
【第105号】