みなさん、こんにちは。
一気に涼しくなりました。数日前まで半袖でも汗をかいていたのが、長袖無しではいられない気候です。体調管理が難しいですが、風邪をひかないように気をつけましょう。
さて、今日のテーマは『塚田選手、谷本選手引退』です。この程、女子の塚田選手と谷本選手が全日本の強化選手登録を辞退しました。塚田選手の場合、しばらく国内大会は続けるそうですが、谷本選手は会見をして引退を表明しました。
長年に亘り活躍され、女子柔道界を牽引してきたお2人に、心よりお疲れ様でしたと労いの言葉を贈りたいと同時に、大変寂しい限りです。
現在、日本の女子柔道は本当に強くなりました。これも2人の存在抜きには語れません。特にこの10年間、常にトップ選手として活躍してきました。
ちなみに、2人は同い年。高校時代は対戦したこともありましたが、プライベートでも、とても仲が良いそうです。
塚田選手は茨城県下妻出身。地元の中学入学後柔道を始めたそうです。遅いスタートながら当時から体格に恵まれ、中3で100㌔。高校は名門土浦日大高に進学。高校に入った頃は48㌔級の選手に足技で転がされたり、関節を決められたりする程弱かったそうです。しかし、徐々に頭角をあらわし、高2、3で国体連覇、高3の金鷲旗では、女子で初めて金鷲旗が関門海峡を渡りました(注:九州以外の高校が初めて優勝したという意)。東海大進学後は更に強さを増し、学生時代に全日本優勝、その後9連覇(現在も更新中)。更に五輪優勝、世界選手権優勝など、3冠も達成しています。
体は大きい反面、繊細で優しい心の持ち主としても知られています。仲良しの薪谷選手が、『負けたら引退』という試合で勝った際に号泣したり、先日の東京世界選手権では、自身は負けましたが、優勝した杉本選手を心から祝福して、吉村強化委員長から『勝負師が仏の心を持ったらおしまい』とコメントされていました。
これだけの実績を残している選手ですが、小生が最も強く印象に残っているのは、優勝した試合ではなく北京五輪の決勝です。物凄い気迫で強敵中国のトウ・ブン選手を圧倒し、ポイントリードしていましたが、最後まで攻めてラスト8秒で逆転の一本負けとなりました。負けはしましたが、トウ・ブン選手相手にあれほど良い試合をしたのは見た事がなく、文字通り『見る者に感動を与える』試合ぶりでした。来年の全日本を花道にと考えているそうですが、是非北京五輪のような気迫あふれる試合をもう一度見たいですし、勝ち負けは別にして、本人が納得のいく試合で、選手生活に幕を閉じて欲しいものです。
一方の谷本選手は、愛知県安城市出身。小学3年から地元の安城柔道教室で柔道を始めました。その頃指導した先生曰く、『選手としての素質は当時から群を抜き、始めたその年の県大会でいきなり優勝、6年では男子を破って驚かせた』と語っています。中学は地元の中学に進学しましたが、柔道部が無く、陸上部に所属、砲丸投げの選手でした。柔道は週に2回、吉田秀彦氏の出身道場で知られる、大府市の強豪大石道場に通って続けました。高校は豊橋市にある桜丘高校でしたが、高校時代の恩師は次のようにコメントしています。『当時から、スピード・柔軟性・力強さ・勝負勘を兼ね備えた逸材だった。精神面も強く、常に上を目指し努力していた。もうあれ程の選手には出会えないだろう』。最大の賛辞ですね。
その後は筑波大に進学、福岡の選抜体重別では2001年から9年連続で優勝か準優勝。上野順恵選手と好勝負を繰り広げてきました。そして、04年アテネ、08年北京の両五輪で2大会連続オール一本勝ちで連覇。00年の世界ジュニアで負けて以来一度も勝てなかったライバル、フランスのデコス選手に勝った北京の決勝の内股は、きっとみなさんの記憶に新しいのではないかと思います。普段は比較的冷静な解説の山口先生が、珍しく声のトーンが変わっていました。多分、デコス選手とのこれまでの対戦から、あれほど見事に決まるとは予想していなかった故の咄嗟の言葉だったと思います。同じ筑波大出身という事もあったかもしれません。
柔道はもちろん超一流ですが、小生がもっと印象に残っているのは、そのキャラクターです。『屈託の無い笑顔』、いかにも『天真爛漫』を思わせる明るい雰囲気を持っています。小生には娘はいませんが、出来る事ならこんな娘が欲しかったと思いながら見た事もありました。今後は所属のコマツで指導者の道を歩むようですが、是非解説やレポーターなどでも活躍して欲しいと思います。
話は変わりますが、薪谷・塚田・谷本の3選手は、以前一部の強化選手で『チームD』を結成、お揃いのTシャツまで作り、遠征や合宿でも親交を深めていたそうです(名前の由来はここでは書けません。ご了承下さい)。
既に引退している薪谷氏が1学年上ですが同世代。実は先日、東京世界選手権開催中の日曜日の朝、『僕らの時代』というテレビ番組で3人だけの爆笑ガールズ・トークを繰り広げていました。試合場では見られない、全く違う素顔の3人に愚息も大爆笑。小生自身も知らなくて、偶然見たので、事前にお知らせできず申し訳ありませんでしたが、録画はしました。ご覧になりたい方は一報下さい。
塚田選手、谷本選手、長年日の丸を背負ってのご活躍、そして名勝負の数々、我々は感動を与えて頂きました。有難うございました。プレッシャーの大きさは、経験した人でないと解らないと思います。
どうかこれからの人生でもますますのご活躍を祈念しています。
平成22年9月27日
【第49号】