『柔道ニュース』 勝負の心

みなさん、こんにちは。
まもなく今年もカウントダウンに近づいてきました。時間は過ぎてみると本当に早いものです。しかし、一つ一つ思い返してみると、色々な出来事が走馬灯の如く駆け巡ります。皆さんの2009年はどんな年でしたか?この柔道ニュースも今回が今年の最後の更新になると思います。

10月14日の初回から13回目となりますが、この間ご愛読頂きました皆様に感謝申し上げます。

さて、今年最後のテーマは『勝負の心』です。
試合観戦の楽しみはいろいろとあります。
勝敗予想もその一つです。
特に少年柔道の場合、初めて見る選手も少なくありません。
そんな時に小生がまず観るのが、柔道着の着こなしと礼の仕方、表情【目】です

一般的には、初心者ほどぎこちない態度の場合が多く、経験を積むに従い、試合
慣れする事によって、あらゆる面で余裕が生まれ試合態度も立派になるものです

勝負強いという言葉があります。実力的には五分五分か若干不利と思われる相手
でも、いざ試合となれば一本勝負。ここ一番という時にどれだけ気持ちを高め集
中できるかで、勝敗が変わる事もあります。特に小学生の場合は試合時間が2分
間、あっという間です。それだけに、集中力【気持ち】が大切です。
講道館館長・全柔連会長の上村春樹先生が現役時代、試合前に対戦相手の目をグ
ッと睨みつけたそうです。
上村先生は目ぢからが強い事でも有名でしたから、たいてい相手が先に目をそら
しました。それがいつもの勝ちパターンで、既に試合する前に『勝った』と思っ
たそうです。
実は、小生が最初に柔道を習った先生も同じ事をおっしゃっていました。
『試合前はドキドキするだろう。対戦相手が大きくて強そうに見えるものだ。で
も、相手も同じだから、気にする事は無い。先ず対戦相手の目をグッと睨み付け
ろ。そして相手が先に目をそらしたら、たいてい勝てる』。
さらに続けて『試合が始まったら、両手を大きく広げて、大きな声で気合いを入
れろ。相手はもっと怯む。組み合う前に半分以上勝負を決めてしまうんだ。』
多分先生は、当時の門下生がおとなしいタイプが多く、気合い負けしているのを
見ておっしゃったのだと思います。
この事は、愚息にも話しました。
「試合で相手の方がずっと強ければ、負けるのは仕方ない。でも、気合い・気持
ちで負けたら許さない」

上村先生の言葉には続きがあります。
全日本選手権で初めて山下泰裕・現東海大学体育学部長と対戦した時の事です。
山下選手は17才の高校生、上村選手は既に全日本選手権優勝経験もある社会人
(その年も優勝)。準決勝で対戦。
『いつものように睨みつけたが、唯一睨み返してきて、組み合うまで目をそらさ
なかったのが山下だった。その時は勝ったけど、「こいつは強くなる」と思った

山下先生のその後の活躍は、前人未踏の全日本選手権9連覇、203連勝、ロス
五輪金メダル等、皆さんご存知の通りです。

お二方とも、火の国・熊本出身であり、良い意味での『肥後もっこす』同志。勝
負根性は特に凄く、視聴者に訴える物が非常にありました。小生はまだ小学生で
したが、その試合はテレビで観ており、今でも覚えています。
あのような白熱した試合をまた観たいですね。

最近は、多くの家庭がお子さんの試合をビデオ撮影されていると思います。
お子さんが、柔道を始めた頃のビデオをご覧になってみてください。
礼や柔道着に、きっと懐かしさと共に、成長の跡が見て取れると思います。

 

皆様、どうぞ良いお年を! 来年も宜しくお願いします!

平成21年12月28日

【第13号】