柔道ニュース 『第29回望星旗少年武道大会(柔道の部)』

みなさん、こんにちは。
一気に肌寒くなってきました。北海道では初雪の便りもありましたね。
今年は特に、体調維持が難しい年だと感じます。風邪は予防が一番です。手洗いやうがいを励行しましょう。

さて、今回のテーマは、10月24日に東海大学(以下、大学やチーム名は敬称略させて頂きます)にて開催された、『望星旗少年武道大会』です。

神奈川県平塚市にある東海大学は、山下泰裕氏や井上康生氏をはじめ幾多の名選手を輩出した、学生柔道界の名門です。山下氏を擁して初優勝した1977年以来、全日本学生柔道優勝大会で開催回数の約半分にあたる16回も優勝しています。
そうした学生トップレベルの選手達が、日頃猛稽古をしている道場で、この大会は開催されています。壁には、輝かしい歴史を物語る優勝時の記念写真や記録、そして歴代柔道部員の名札が掛けられています。往年の名選手たちの名前を拝見していると、当時の勇姿や得意技、中には印象に残った試合内容まで記憶が甦り、何十年も時代を遡ったような懐かしい気持ちになりました。
最近の子供たちが、恵まれていると感じる事の一つとして、このような輝かしい歴史を生んだ道場で、試合が出来る事です。
これが、どれ程幸せな事か、現時点で子供達に解って欲しいとは言いません。でも、いずれその時が来てくれたら良いなあとは思っています。
地方で育ち、県レベル以上の大会に出場した経験のなかった私は、日本武道館や講道館、ナショナル・トレーニング・センター(当時はありませんでした)、有名大学の道場等で試合や練習をした経験は皆無でした(それが普通でした)。ところが、小学生の息子は、既に色々経験しています。本人がその価値を理解しているかは別として、貴重な体験だと思います。山崎道場の子供達を見て、その思いを強くした次第です。

話を戻します。東海大学の創設者であり初代総長だった故・松前重義氏は、国際柔道連盟の会長もされた方で、大学柔道においても非常に注力されました。体育学部武道学科を設置、豪華指導陣のもと柔道部も強化され、前述のようなすばらしい実績の源を築かれました。
松前氏の遺された言葉に、次のようなものがあります。

・若き日に汝の思想を培え
・若き日に汝の体躯を養え
・若き日に汝の智能を磨け
・若き日に汝の希望を星につなげ

原典は米国の思想家の言葉だそうですが、『少年よ大志を抱け』とも通じる言葉で、『望星旗』の”望星”はここに由来しています。松前氏が1936年に念願の教育事業を開始するため開設したのが、望星学塾であり、これが今日の東海大学の母体です。現在も東海大学望星学塾として、子供から大人まで幅広く数々の特色ある教室を開講。柔道では、強豪・松前柔道塾として活躍されています。

さて、今年の大会は49チームが参加、全国トップクラスのチームも多数あり、たいへんな盛況のもと熱戦が繰り広げられました。
試合は団体戦のみで、高学年と低学年の2つに分かれます。
高学年は、先鋒から学年順に4・5・5・6・6の5人制、低学年は2・3・3年の3人制で、それぞれ点取り試合です。
まず、3チームでリーグ戦を行い、一旦順位を決めます。次に、リーグ戦で同じ順位だったチームが集まり、トーナメント戦を行うという方法を取っています。
つまり、リーグ戦で2試合、トーナメントの初戦で負けても、合計3試合はできますし、トーナメントでは基本的に、ある程度力の拮抗した相手と試合を行えるという、非常に良く考えられたシステムになっています。

<試合結果(1部トーナメント)>

【低学年】

優勝  小川道場
2位  愛柔会
3位  朝飛道場
3位  松前柔道塾

【高学年】

優勝  朝飛道場
2位  春日柔道クラブ
3位  臥牛館
3位  小川道場

(2部・3部は割愛します)
ちなみに、山崎道場は低学年・高学年ともにリーグ戦は2位でした。その後2部トーナメントでは、緒戦を突破する事はできませんした。
選手は一生懸命闘いましたし、強豪チームと試合をした事で、良い経験を積めたのではないかと思います。是非今後に活かして欲しいと願います。

団体戦で勝ち上がるためには、勝てる試合を確実に勝ち、引き分けられる試合は落とさない、という事が鉄則です。そんな戦い方が出来るチームがやはり上位に進出していると感じました。とは言え、特に少年柔道の場合、勝利のために”引き分け戦法”などを使う事無く、二本しっかり持って正々堂々勝負して、結果としてそうなる事が大切です。

高学年で優勝した朝飛道場は、2週間前に開催された日整全国少年大会で優勝した神奈川県選抜のメンバーが、5人中4人も入ったチームです。特に大将の辻選手は、全試合を見た訳ではありませんが、誰もが強さを知っており、マークされていても、確実に一点取るという文字通りエースの活躍ぶりだったと思いました。体重も93㌔と小学生離れしていますが、身長が伸びて体も締まり、『決め』も上手いし寝技も強いです。春・夏の個人戦でも全国優勝、この半年でまた一段と強くなったなと感じました。次回見る時に、どこまで成長しているか、非常に楽しみです。

希望を高く持つ事は少年・少女の特権です。夢を追い求め、いつの日か第2の『ヤマシタ』・『イノウエ』と呼ばれる選手が、この中から出て来てくれる事を願っています。

【柔道関連テレビ情報】

『全日本学生柔道体重別団体選手権』

兵庫県の尼崎市で開催される学生の階級別団体戦です。男女とも1チーム体重別7人戦で優勝を争います。
今年は、男子は層の厚い東海大・国士舘大を筆頭に(東海大は高木選手がケガで欠場は残念ですが、代わって出るのが羽賀選手<世界ジュニア優勝>ですから本当に層の厚さを感じます)、世界柔道のメダリスト森下選手・西山選手・粟野選手らを擁した筑波大、上川選手や海老沼選手を擁した明治大あたりを中心に優勝争いが展開されると思います。
女子は、帝京大(学生チャンピオンの近藤選手他)・山梨学院大(世界チャンピオンの浅見選手他)を筆頭に、田知本姉妹のいる東海大学、緒方選手のいる筑波大あたりが有力視されています。また、古賀稔彦総監督率いる環大平洋大も創部4年目ながら前評判が高いです。
試合は10月30日、31日の両日に開催されますが、放送は以下の通りです。

11月3日(祝)15時から16時(予定)

NHK 教育

平成22年10月28日
【第53号】