柔道ニュース 『全少から学ぶ』

みなさん、こんにちは。

 

いよいよ明日は南埼玉郡市大会です。

みな各々のベストを尽くして頑張りましょう。

 

さて、今日のテーマは『全少から学ぶ』です。

 

『全少』とは『全国少年柔道大会』の略で、毎年5月5日に講道館で開催される小学生の全国大会です。

各都道府県の予選を勝ち抜いた代表1チーム(開催地東京は2チーム)が今年の日本一を争う団体戦、それと団体戦チームから4年生・5年生で一人と6年生で一人出場資格が与えられる個人戦があります。

昭和56年に始まり、今年で第31回になります。かつては、中村3兄弟や谷亮子選手、井上康生選手、現役では、今年の全日本の決勝を争った鈴木選手や穴井選手など多くの優秀な選手を輩出している大会でもあります。

 

ここでは団体戦をご紹介します(敬称略)。

団体戦は、神奈川県代表の朝飛道場と大分県代表のUSA s.j.c(宇佐少年柔道クラブ)の決勝となり、①-1の内容差で朝飛道場が優勝、朝飛道場は4連覇という快挙達成です(昨年の3連覇が史上初で、今回それを更に更新)。

と、このように書いてしまうと『今年も朝飛道場が優勝したんだね』で終わってしまいそうですが、今年はこれまでと事情が違いました。

これまでの朝飛道場は、全体的に大型で、しかも浅野選手(現東海大相模中3年)や辻選手(現東海大相模中1年)のような、いわゆる『大エース』がいました。確実に1点計算できる選手に加え、他の選手も身体が大きく強力布陣でした。

しかし今年のチームを見ると、次鋒の賀持選手は大きいですが、他の選手は鍛えられているとは言え、サイズは普通の小学生に近い体格で、この大会に出てくるチームの中では小柄です。

先鋒(5年)39㌔

次鋒(5年)58㌔

中堅(6年)37㌔

副将(6年)42㌔

大将(6年)59㌔

平均    47㌔

 

特別体格にも恵まれず、昨年までのような大砲も不在の中、全国の精鋭チーム相手に勝ち上がるのは至難の業です。今回優勝できた要因について感じた事を綴ってみたいと思います。

 

①前向きな姿勢

柔道は一対一で戦う競技ですが、団体戦は『流れ』も大事です。

勝ち負けという結果以前に、覇気のある姿勢が勢いを産みます。

特に先峰はそうで、かつて4連覇した時の東海大は、中西選手(後の世界チャンピオン)が先峰でした。中西選手は、71㌔級ながらポイントゲッターであり、佐藤監督から『火の玉小僧』と言われる程のファイターでした。

今大会は、学年順・体重順に配列するため、意図的に元気者を先峰という訳には行きませんが、結果的には元気な5年生2人で流れを作るチーム構成だと思います。その他の選手も前に出る柔道、大きい相手にも果敢に攻める姿勢が大変印象的でした。

 

②チーム一丸

団体戦ですから、程度の差こそあれ、相手チームと相対した際に、算段すると思います。

一人ひとり、この試合は勝てそうだとか、分が悪そうだとか、ここは絶対一本勝ちを期待したいとか、この相手には1点やっても仕方ないとかです。

優勝出来た要因として、思惑通り行かず、例え誰かが負けたり引き分けたりしても、他の選手が取り返す、そうしたチーム一丸の気持ちが試合にも出ていたように思います。

 

③最後まで諦めない気持ち

決勝は前2人がポイントを取るまでに至らず引き分けでした。相手の副将と大将は強力メンバーなので、前で貯金が出来なかった時点で嫌な雰囲気が脳裏を過ぎったのではないかと想像します。しかしながら、それを断ち切ったのが中堅で、見事に寝技で一本勝ちでした。

続く副将は、ポイントを取られはしたものの最後まで粘り、優勢負け。もしもこの副将戦一本負けで1-1の代表戦となったら、厳しかったかもしれません。

 

④寝技

混戦の決勝戦、最後に物を言ったのが寝技でした。中堅戦での一本勝ち、大将戦での引き分けともに、手に汗握る寝技の攻防がありました。

特に大将戦は、大きな相手にリスク覚悟で積極果敢に攻めていく姿勢、力と力の攻めぎ合い、最後までどちらに転ぶか判らない熱戦でした。

こんな試合を、チームの応援席で観戦できたら感動するでしょうね。もちろん、全国優勝のかかった大将戦、それも①-1で相手はデカイときていますから、親御さんは心臓が飛び出さんばかりではなかったかと思います。

 

ちなみに、勝ち上がりは以下の通りです。

1回戦  ②-2

2回戦  4-1

3回戦  2-1

準決勝  2-1

決勝    ①-1

 

優勝チームがこれだけ接戦続きで勝ち上がるのもめずらしいと思います。

運も味方した所もあったかもしれません。でも、諸々全て日頃の稽古の積み重ねの結果だと思います。

2年前に茨城県の超大型チームと争った決勝戦も大熱戦でしたが、今年もすばらしい少年達の姿を見せてもらいました。

みなさん、おめでとう。そして、ありがとう。

 

平成23年5月28日

【第76号】