柔道ニュース  『オリンピック3連覇、野村氏の話④』

みなさん、こんにちは。

野村氏の話の最終回です。

今回はcompetency(コンピテンシー)というテーマですが、コンピテンシーとは、優れた業績を残したハイパフォーマーに見られる共通の行動特性のことを言います。

ここでは、5つの視点で野村氏に聞いています。

『現状把握』(今を知る)

Q:今時点の実力や置かれているポジションをどういうふうに理解して、その時どういう考えで行動していたか。

A:現状、自分が置かれている立場、自分の実力、何をしなければいけないのか。そういうことを自分でも知ろうとしたのは大学に入ってからだった。

Q:大学に入って、現状を理解して行動を取ったり考え方を改めることは自分にとってとても大切なことだとは思ったか

A:そうですね。勝負の世界にいる以上、頑張って当たり前。その中で世界一になれるのは努力しても各階級一人だけ。その中で自分がそこに到達するためにどういう頑張り、どういう努力をしなければならないか。努力の仕方ってたくさんある。どれが自分に相応しいのか、そこまで見極めて自分を作っていくところに、本当に成長があって意味がある。

『分析』(過程を振り返る)

Q:分析して何が足りないとか、どうしていこうという『分析』に対してどう考えているか

A:柔道は対人競技だが、相手の分析についてはほとんど興味が無かった。最低限の情報だけ入れて、あとは一切知りたくないタイプ。必要以上のことを知ると、注意深い人間でビビリの人間だから、必要以上のことを知ったらそっちに意識が行ってしまう。自分の柔道を貫くために、必要以上の情報は入れなかった。

『目標設定』(達成思考の行動をとる)

Q:目標設定の必要性とか重要性についてどう考えているか。

A:自分は目標と夢を使い分けていた。目の前にある目標、プラス逆算という意味で遠いところにある目標⇒夢を追いかけていた。

負けた時は、負けを経験だけに終わらせずに、経験したことを生かして次の目標で勝てる自分を作る。そうやって一歩ずつ進みながら、夢、例えば3年後のオリンピックをしっかり自分に引き寄せていく。

目の前にある目標を自分に生かし、先にある夢を引き寄せていく。

『実行力』(取捨選択をして行動する)

Q:物事を考えて、必要じゃ無いものと必要なものを選択しながら行動することも大事なことだと思うが、実行する力はどういう捉え方をするか。

A:夢や目標が大きくなればなるほど到達するまでに苦しみも増える。いくら自分が好きな柔道、自分が選んだ柔道でも、子供の頃の純粋な楽しさって無くなって、逆に到達した時は単に楽しいという簡単なものではなく、もっと深い喜びやもっと深い感動があるから、ある時から柔道をやっていて楽しいとは思わなくなった。楽しさを求めなくなった。それ以上に得られるものがたくさんあるから。

だから感動が大きい、喜びが大きいものを手にする為には、やっときゃ良かったではなくてやれよという話だし、全部自分に返ってくると思えば手を抜けない。だから実行する。

『執着心』(成功に執着する)

Q:物事に執着する心についてどう考えるか。

A:凄く必要なものと思う。執着心、自分は執念という言葉を良く使うが、「こだわる」ことと「とことんやり抜く」ことはとても必要だと思う。

大切な柔道だけは負けたく無かった。それだけに執着した。

以上、4回に亘ってご紹介してきました『オリンピック3連覇、野村氏の話』、如何でしたでしょうか。

参考になる話があって、何かしら「気付き」があったら幸いです。

東京オリンピックではフランスのリネール選手が3連覇を目指しますが、それ位ハードルの高い偉業です。日本からもチャレンジする抜群の力を持った選手が出て来て欲しいと思います。そして、結果以上に素晴らしい柔道を見せてくれる選手の出現を願っております。

令和2年8月18日

【第194号】

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