柔道ニュース 『味わい深い話』

みなさん、こんにちは。

 

大相撲で琴奨菊関が大関に昇進しました。日本人としては4年ぶりのことです。

琴奨菊関は、福岡県柳川出身の27才。子供の頃地元の相撲協会の役員だったおじいさんに相撲を習ったのがきっかけで、小学4年時わんぱく相撲全国大会で両国の国技館の土俵を踏み、中学からは親元を離れ相撲の名門、高知県の明徳義塾に相撲留学して中学横綱となりました。同高校卒業後佐渡嶽部屋に入門し、三役(関脇・小結)昇進は23才と早かったものの、暫く足踏み状態が続いていましたが、今回晴れて大関となりました。

小学生時代、通っていた久留米市の相撲道場の先生は、小学生の頃からプロを目指し

ており、練習には人一倍熱心だったとコメントされていました。自宅近くに土俵を作

り、稽古がない日もひたすらしこを踏んでいたそうです。また、アドバイスにきちん

と耳を傾けることのできる素直な性格だったそうで、その後も伸びた秘訣ではないか

とのことでした。

最近は、若くして大関になっても、勝ち越すのがやっとで、とても横綱を目指す成績

を残せていない人が多いです。

是非『強い大関』であって欲しいし、横綱を目指して精進して欲しいと思います。

先代の師匠琴櫻関や『おしん横綱』隆の里関のように、30才過ぎてから横綱になっ

た力士もたくさんいますから。

 

さて、今日のテーマは『味わい深い話』としました。

 

雑誌近代柔道の今月号に、江上忠孝氏が紹介されていました。

江上氏は先ほども出た福岡県は久留米の出身で、久留米工大付属高⇒中央大学⇒九州

電力と進み、全日本選手権(4回出場)や国際大会(バンコク国際優勝、モナコ国際

優勝)にも活躍した柔道家で、現在九州電力のコーチをされています。

現役時代、職人気質というか野武士を思わせる個性的な選手で、袖釣込腰の名手でし

た。

私が子供の頃、往年の名選手達がこんな話をしていました。『昔の選手は、あの選手

といえば××(技の名前)とか、××といえばこの選手』というように、それぞれの

選手に代名詞のような技があった。今はそうした個性派はいないと。江上氏は選手

時代、近年稀に見る個性派選手だったと思います。

この江上氏が、近代柔道で袖釣込腰の解説をしていますが、その中で強くなる秘訣と

して挙げている事が、とても素晴らしい話でしたので紹介します。

 

・練習は余力を残さず100%出し切る

・身近にライバルをつくり切磋琢磨する

・乱取り(自由練習)は1番強い相手と何本も練習する

・相手より先に組んで動きの中で技を掛ける意識を持つ          

・練習中は先輩、後輩はない           

・技の鋭さは毎日の打ち込みで磨かれる

・練習中はかかとを着かない

・受けはヒザに余裕を持たせ、足を前後にさばき、腰や引き手を切る

・投げたい方向の逆を攻め、相手の反作用力を利用する

・できない理由を考えるのではなく、できる方法を考える

・組み手はつかむ位置を目で追うこと。これは目標を定めてすばやくつかむためです。組み手はすばやくつかむため、叩いて取る

・人のアドバイスは目、耳、心で聞き、感じたことはメモする

・目標は大きく、計画は具体的に考える

・ランニングは砂浜、階段、坂道などいろいろ走るとよい

 

まだまだいろいろありますが、自分でも何が強くなる秘訣なのか、よく考えながら練

習すれば、あなたは必ず強くなります。頑張ってください

 

 

以上、原文のままご紹介しました。山崎道場の門下生なら、ほとんど日頃教えて頂い

ている事で、一つ一つは目新しい事では無いかと思います。しかしながら、その通り

実行出来ているかとなると話は別です。

あらためて読み返してみると、柔道経験者なら誰しも思いあたる、実に味わいのある

言葉の数々だと思います。

また、技の解説も掲載されていますので同誌をご覧ください。

 

山崎道場は練習日は多く無いですが、だからこそ、こうした事を意識して練習に取り

組んで欲しいと思います。

柔道に限らず、あらゆる物事にも通じる大切な事柄だと思います。

 

 

【ご参考情報】

本日ご紹介したお二人が、共に福岡県のそれも程近い柳川と久留米だったことで、ご

参考までに、同郷の柔道家をご紹介します。

『柔道王国九州』ですが、中でも福岡と熊本は特筆すべき存在です。

久留米では、やはり故・松本安市氏をあげさせて頂きます。既に当欄で何度も掲載させて頂いている方ですので、詳細は割愛しますが、東京五輪の日本チームの監督であり、天理大学の初代師範、ヘーシンクやルスカも熱血指導したことで知られています。

他では、全日本選手権チャンピオンで、後にプロレスラーとしても活躍された、坂口征二氏やモントリオール五輪銀メダルの蔵本孝二氏も久留米市立南筑高校の出身です。

更に、『平成の三四郎』古賀稔彦氏が柔道を始めたのも、当時住んでいた久留米市の久留米少年柔道クラブです。

一方の柳川は、兄弟で世界制覇された園田義男氏と勇氏がいらっしゃいます。また、出身は違いますが、現在の全日本強化委員長の吉村和郎氏や女子監督の園田隆二氏、世界選手権4連覇の園田(旧姓阿武)教子氏、園田氏と共に明治大学の助監督をされている猿渡琢海氏等が柳川高校の出身です。

他にもいらっしゃいますが、思い浮かんだ代表的な方をご紹介させて頂きました。

 

 

平成23年10月5日

【第88号】